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295:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/09(火) 00:13:44.88 ID:Y1jnVnrCo

 とりあえず別にナオトさんの身に何かが起こったわけではないみたい。そう報告すると
奈緒は再び落ち込んでいった。

「あたし嫌われちゃったかな」

 奈緒がピアノのレッスンの帰り道の電車の中で、相変わらず暗い表情で言った。

「奈緒ちゃんと彼氏って付き合い出したばかりでしょ? 嫌われる要素なんかなくな
い?」

「ううん。もともと何かこうなる気がしてたんだ」

「何よ。何か思い当たることでもあるの?」

「うん」

「よかったら話してみて? 力になれるかもしれないし」

 少しだけためらってから奈緒はあたしに向かって話し出した。

「あたしが悪いんだと思う。冬休前にナオトさんは楽しそうに休みにはいっぱい会えるね
って言ってくれたの。でも、あたしはナオトさんの誘いを全部断ったの。冬休みはピアノ
があるから会えないって。ナオトさんはわかったって、気にしなくていいよと言ってくれ
たけど、やっぱりそのことが原因であたしはナオトさんに嫌われたんだと思う」

「そうなんだ」

 その話はあたしは知っていた。そしてナオトさんは奈緒がピアノのレッスンに集中した
がっていることを理解していたはずだった。でもそれを奈緒に話して彼女を安心させるこ
とはできなかった。

 あたしがナオトさんやその妹の明日香と密かに仲良しになっていたことは奈緒にはまだ
話をしていなかったのだ。あたしはそのタイミングを見はからっていたのだけど、どうや
らこの様子ではその機会は二度と訪れないことになりそうだった。

「ナオトさんなら奈緒ちゃんのピアノのことも理解してくれているって」

「自分ではナオトさんのことすごく大切に思っていたつもりだったけど、自分の中でどこ
かピアノを優先していたのかもしれないね。そのことをナオトさんも気が付いたのかもし
れない」

 奈緒の目から涙が一筋流れ落ちようとしていた。

「奈緒ちゃん」

「自業自得なのかも」

 奈緒は涙をハンカチで拭いて話を締めくくった。

「それでどうするの? このまま自然消滅するんでいいの?」

 あたしは何だか腹が立ってきた。この大晦日や元旦の間にナオトさんに何があったのか
は知らないけど、どんな形にしろ正式に付き合っている奈緒に対していきなり音信普通に
なるなんてひどすぎる。

 あたしだって自分のしていることや考えていることが誉められたことではないことは百
も承知だけど、それにしてもフェードアウトはないだろう。いくらなんでも奈緒に失礼だ。

 奈緒のピアノにとってはこのままナオトさんと別れた方がいい。今の奈緒の演奏はぼろ
ぼろだ。それは無理もないことだった。でもナオトさんとの理不尽で辛い別れを自分の中
で昇華したとき、奈緒の演奏は飛躍的に感情表現が花咲いて今までより一段上のレベルに
進めるのではないのか。

 あたしはそう思ったけど、それにしてもこのままナオトさんの突然の心変わりをこのま
ま謎のままにしておくことも気が進まなかった。


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