297:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/09(火) 00:19:04.13 ID:Y1jnVnrCo
冬休が終った最初の登校日の朝、僕はいつもよりだいぶ早い時間に起きて普段より一時
間以上早い電車に乗った。休み明けが僕より二日間遅い明日香は僕を学校まで送っていく
と言い張った。
きっと僕の決心が揺らいでいつもの時間にナオと待ち合わせてしまうことを恐れたのだ
と思うけど、それは無駄な心配だ。今の僕にはナオと顔を会わせるどころか彼女の可愛ら
しい表情や彼女の気持ちのいい声を思い出すことさえ自分に禁じていた。必死に努力し他
のことを考えて気を紛らわせ、ナオのことを記憶から追い出す。
そうすることによってのみ、僕の世界はとりあえず崩れ去っていくことなくその姿を保ち続け
ることができたのだ。
あの時。
最初は明日香の悲鳴のような声に気を取られていたせいもあって、叔母が言った言葉の
意味の重さにすぐには気がつかなかった。
その瞬間はむしろ混み合った店内の客の視線をひき付けてしまっていることの方に意識
を奪われていたかっら、僕は反射的に呆然と立ち尽くしている明日香の手を引いて向かい
の席に座らせた。
「・・・・・・前にあたしの家であんたは奈緒ちゃんと奈緒人が一緒に歩いてたって言ってた
ね?」
叔母さんが恐い表情で明日香に聞いた。たった今妹が見せた狼狽のことはわざと無視し
ているようだった。
「あんた奈緒人が奈緒ちゃんとそういう関係だって知ってたの? そもそも奈緒人と奈緒
ちゃんはお互いのことを実の兄妹だってわかっているの?」
そのあたりで僕はようやく叔母の言葉が持っていた意味に気がついた。胃の奥が痛み始
めたと思った途端、何かが急速に喉からせり出してきそうな感覚があった。
「あたしは知ってたよ。奈緒が知っていたかどうかはわからない」
明日香が低い声で言った。
「奈緒人は・・・・・・って知ってたって感じじゃないね。でも。何でそのまま放っておいたの
よ」
「お兄ちゃんが好きになった子が実は自分の妹だなんてわかったら、どんだけショックを
受けるかを考えてみて」
「明日香・・・・・・」
「だからお兄ちゃんをあたしい振り向かせて奈緒への好意を無くさせようとしていたの。
好意がなくなった相手が後から実の妹だってわかった方がまだショックは少ないでしょ。
自分が一番好きな子が実の妹だったことがわかったのと比べたら」
「・・・・・・あたしが邪魔しちゃったわけか。明日香ごめん」
「あたしに言われても」
このあたりが限界だった。僕は立ち上がってトイレに駆け込んで胃の中のもの一気に吐
き出した。
1002Res/1204.35 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。