334:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/15(月) 23:28:28.74 ID:p6U3xssZo
今日は学校は半日しかなかったのに結果的には僕にとっては長い一日になってしまった。
さっき兄友と女さんに明日香と手をつないでいるところ不思議そうに見られて戸惑いを感
じたことが随分昔のことのように思えてくる。
今こうして帰りの電車の中で並んで座っている僕と明日香を兄友たちに見られたとした
ら、さっきのように見過ごしてくれることすらないかもしれない。明日香は叔母さんと別
れて集談社のビルから出た途端、どういうわけか僕の手を離した。
その時僕はすごく心細く感じたのだけどそれは一瞬だけだった。僕の手を離した明日香
は再び手を握りなおした。今度は恋人つなぎだった。僕はナオとだってこんな風に手をつ
ないだことはない。
「おい」
「いいから」
明日香が思わず引っ込めようとした僕の手を捕まえた。
「お兄ちゃん、無理しないでいいよ。いろいろこないだから展開も急だったし不安なんで
しょ?」
「確かにきついことはきついけどさ」
「じゃあ遠慮しないであたしに頼りなよ」
電車を降りて夕暮れの住宅街を自宅に向かって歩いているときも、明日香は僕にぴった
りと寄り添ったままだった。僕は安堵感と同時に罪悪感が膨れ上がっていくのを感じた。
やがて僕たちは真っ暗な自宅の前に帰ってきた。
「あのさあ」
僕は今まで以上に僕のそばに寄り添ってきた明日香に言った。今、明日香を失ったら僕
はどういう状態になるのかわからない。その恐れは僕の中に確かにあったのだけど、いつ
までも妹を僕の犠牲にするわけにはいかないのだ。
「おまえもあんまり無理するなよ」
「え」
明日香が僕の言葉に凍りついた。僕の手を握る明日香の手に込められた力が弱々しくな
っていく。
「確かに今の僕は情けない兄貴だし、明日香に頼って何とか心の平穏を保っている状態な
のはわかっているんだけどさ」
「だ、だったらもっとあたしに頼っていいよ。言ったじゃん? あたしはもう二度とお兄
ちゃんを一人にはしないって」
「おまえには無理をして欲しくないんだよ。父さんのためにも母さんのためにも」
「お兄ちゃん・・・・・・何言ってるの」
「おまえはずっと僕を守ろうとしてくれてたんだろ? 僕がナオと付き合い出したのを知
ったときから」
「そのためにおまえ、彼氏とも別れて友だちとも縁を切ったりしたんだろ」
「お兄ちゃん」
「・・・・・・おかしいとは思っていたんだ。あれだけ僕を嫌っていたおまえが、僕のことを好
きだって言ったりいきなりその・・・・・・キ、キスしたりとかさ」
「それは」
「・・・・・・僕の気持ちをナオからおまえに向けさせようとしてくれていたんだね。真実を知
ったときに僕があまり傷つかないように」
明日香が驚いたように目を見開いた。
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