357:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/20(土) 00:00:37.68 ID:qeBzAYhpo
その晩、結局明日香は帰って来なかった。明日香の帰宅が深夜になること自体は今まで
だって珍しいことではない。特に両親が泊まりで帰宅できないとわかっていたときには頻
繁にあったことだった。
でも明日香が深夜に帰宅しないのは、いい妹になると僕に宣言してから初めてのことだ
った。得体の知れない不安を感じた僕は以前と違ってさっさと一人で就寝することもせず、
リビングでひたすら彼女の帰りを待った。
さっきユキが曝露した話、明日香がユキに対して僕と仲良くなるようけしかけていたと
いうのは初耳だった。ユキはどうも僕がナオに連絡しない原因が明日香にあると思い込ん
でいるようだ。その腹いせのためナオは明日香が僕に黙ってユキに対して働きかけていた
事実を曝露したのかもしれない。
ユキがそのことを聞かされた僕からどんな反応を期待したのかはわからない。
でも実は僕は少しも動揺しなかった。ユキに対しては悪いことをしたとは思う。でも明
日香のその動機は僕の気持ちをナオから離すことにあったはずで、そのきっかけは僕が好
きになるのが自分でもユキでもどちらでもいいと彼女は考えたのだろう。
だからユキには申し訳ないとは思ったけど、それを仕掛けた明日香に対しては感謝の思
いしか感じなかった。
それでも明日香はユキの言葉にショックを受けたようで、明日香に利用されたユキの腹
いせというか復讐は、少なくとも明日香に対しては功を奏したようだった。
明日香のことが心配だ。携帯に電話しても出てくれない。リビングでうろうろしながら
ずっと彼女を待っていた僕は、日が変わる頃になってついに明日香の帰宅を待つことを諦
め、夜中に一人眠りについた。
翌朝になって、開け放されたドア越しに明日香の部屋を見ても階下に降りても明日香の
姿は見当たらなかった。さすがに不安になった僕は立ちすくんで考えた。
明日香の僕に対する告白については昨日の彼女の様子を見ると、もはやあいつのいつも
の気まぐれだと片付けるわけにはいかない。明日香の僕への想いはいよいよ本気で考えな
ければいけないようだ。
でもそんなときに、僕とナオのトラブルやユキの感情の暴発みたいなことが同時に生じ
た。整理が追いつかないほど色々な出来事があり、その上ナオに関しては心情的には致命
的と言っていいほどの傷を負ったのだ。今は考えないようにしているだけで、これは爆弾
を抱えて生きているのと同じ状態だった。
明日香に対しては責任ある態度を示してあげなければいけないのだろうけど、そもそも
自分の彼女のナオに対してさえ、僕は無視する態度以外には何もできなかったのだ。
とにかく学校に行こうと僕は思った。ここで明日香を待っていても妹が帰ってくる保証
はない。
それにしても、いったいあいつは今どこで何をしているのだろう。
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