過去ログ - ビッチ
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358:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/20(土) 00:01:08.99 ID:qeBzAYhpo

 駅に向かう途中の高架下にナオが待っていた。僕が彼女の姿を認めた瞬間にナオも近づ
いてくる僕を見つけたようだった。僕たちの視線が交錯した。

 ナオを見るのは久しぶりだった。冬休みが始まる前の最後の登校以来だ。このときの僕
の胸からは明日香のことを心配する気持ちが消え去り、頭の中にはそこに立っているナオ
にへの想いだけが溢れていった。

 やっぱりナオは可愛い。外見だけで判断するなら明日香よりもユキよりもはるかに可憐
な容姿だ。登校前なのだろう、ナオは富士峰の清楚な制服に身を包んでいた。

 逃げるわけにもいかず、僕は麻痺したような機械的な足取りでナオの方に近づいていっ
た。

「おはようございます」

 ナオが僕を真っ直ぐに見つめて言った。緊張している様子だったけど、それでも彼女は
僕から目を逸らそうとはしなかった。

「・・・・・・おはよう」

 僕は何とか彼女に返事をすることができた。感情は乱れているけれど今のところフラッ
シュバックが襲ってくる様子はなかった。

「・・・・・・途中まで一緒に登校してもいいですか」

 ナオの言葉に僕は黙ってその場にたちすくんだ。

「それとも、それすらナオトさんには迷惑ですか」

 ナオが言った。震えそう声、付き合い出したばかりの頃のような敬語。

 それは僕の中にナオのことが可愛そうでどうしようもないようなじれったい感情を呼び
起こした。でもここで気を緩めるとかえってナオを不幸にするのだ。

 ・・・・・・こういう心理的な傷を心に負うのは僕だけでいいのだ。

「何か用かな」

 僕は感情を極力抑えてナオに答えた。

「昨日の夜、有希ちゃんから電話がありました。ナオトさんはもうあたしとは付き合う気
がないって有希ちゃんは言ってました」

「そう」

「本当なんですか」

 ナオの真っ直ぐな視線が僕を捉えた。


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