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382:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/23(火) 22:49:28.04 ID:o4ymIMCXo

 両親が真っ青な顔で救急病棟に飛び込んで来た。子どもたちの前ではいつも呑気そうな
父さんと母さんのこんな必死な様子を僕は初めて見た。それでも父さんは動転している様
子の母さんの手をしっかりと握って、その身体を支えるようにしている。

 叔母さんは父さんと母さんをちょうど救急治療室から出て来た医師のところに連れて行
った。医師が手早く父さんたちに明日香の容態を説明した。その話はさっき僕が叔母さん
から聞かされたことと同じ内容だったけど、医師はこう言った。

「お嬢さんは少し精神的にショックを受けておられますけど、幸いなことに外傷は軽微な
ものでした。もちろん命に別状もないし外傷も後には残らないでしょう。もう処置も終っ
ていますので、念のために一晩入院して容態に変化がないようでしたら明日には退院して
もらって大丈夫ですよ」

 叔母さんの説明と順序を逆にしただけだけど、その医師の説明を受けて両親は少し安心
したようだった。外傷は大したことはないけど精神的にはショックを受けているというの
と、精神的なショックはあるものの外傷は大したことはないという説明では受ける印象が
まるで異なる。救急病棟に努めていると悲嘆にくれ動転している家族の扱いも上手になる
のだろうか。医師は少しだけ両親を安心させると、明日香が目を覚ましたら面会していい
と言い残して去って行った。

 医師が去って行くと今度は地味なスーツを着た体格のいい男が二人、両親に近づいて来
た。僕はその人たちがこの場にいることにこれまで気がついていなかった。

「結城明日香さんのご両親ですね」
 片方の男が言った。「所轄の警察署の者です。この事件のことをお話しさせてもらいま
すので、その後で何か事情をご存知でしたらお話ししていただけますか」

 その人は何かやたらていねいな言葉遣いだったけど、それはその人の外見には全く似合
っていなかった。話しかけてきた男の人ももう一人の黙って立っている方の人も体格がい
いだけではなく目つきや表情も鋭い。

 高校生の不良のトラブルなんかを相手にしているよりは暴力団とかを相手にしている方
が似合っている感じの男たちだった。

 僕たちは救急病棟の待合室の隅でソファーに座った。自己紹介した男は警察署の生活安
全課の平井と名乗った。

「先にいらっしゃったご親戚の、ええと・・・・・・そう、神山さんにはお話ししたんですが、
娘さんは昨日の夕方から夜にかけて繁華街をあっちこっちある行きまわっていたみたいで
すね。その途中で知り合いの高校生の男に出合って、自分のアパートに来ないかと誘われ
てついて行ったみたいです」

 両親は身じろぎもせず警察の平井さんの話に聞き入っていた。医者の話で一瞬安心した
ようだった二人の表情はまた緊張してきたようだ。

「そいつはそこで一人暮らしをしいるんですがその部屋でお嬢さんは、その・・・・・・」
 平井さんは気を遣ったのか少し言いよどんだ。「つまりそいつに乱暴されそうになって
大声を出して抵抗したところ、黙らせようとした犯人から殴られたらしいです」

「・・・・・・大丈夫ですか」

 一応の礼儀としてか平井さんは青い顔の両親を気遣うように言った。もしかしたら警察
のマニュアルにこういうときはそうしろと書いてあるのかもしれないけど、いずれにせよ
平井さんには心から両親を気遣っているような感じはしなかった。

「大丈夫です。続けてください」

 父さんがそう言って母さんの手を握りしめた。


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