過去ログ - ビッチ
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385:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/23(火) 22:53:42.31 ID:o4ymIMCXo

 僕はそっと部屋を抜け出そうとした。多分明日香は僕にも言いたいことがあるに違いな
い。でも今の僕にはそれを聞く資格はない。それに僕には平井さんが帰ってしまわないう
ちに聞いておきたいこともあったのだ。

 過去の過ちはともかく今は明日香を守らなければならない。明日香は昔の悪い仲間と縁
を切った。でもそれによって明日香は池山たちから完全に自由になれたわけではなかった
ようだ。池山が別れた昔の女に執着して明日香を襲おうとしたのならわかる。でも明日香
を襲おうとしたのは飯田という別な高校生だった。

 単純に知り合いだった明日香を出来心で何とかしようという話ならまだしも気は楽だっ
た。でもそうじゃない可能性もあった。平井さんの話を聞いてから、僕の胸には二つの光
景が浮かんでいたのだ。



 奈緒と有希が通っているピアノ教室で誰かを待っているように入り口を見張っていた池
山。

 あのときは僕は奈緒と二人で誰にも邪魔されずにピアノ教室を後にした。仮に池山が無
駄足を踏んだのでなければ、あいつは有希の方を追いかけたのかもしれない。

 そして昨日。冷たい表情で明日香を言葉で追い詰めた有希。

 あれは清純で無邪気な中学生の女の子の表情じゃなかった。そして明日香が有希の言葉
に耐えられずに駅の方に走り去った後に明日香は飯田に襲われたのだ。

 これは単純な偶然なのだろうか。



 父さんと母さんが明日香を抱きしめるようにしていたので、僕の動きは悟られないで済
むだろう。そう思って病室から抜け出そうとしたとき、玲子叔母さんが僕を見ていること
に気がついた。

 僕は叔母さんに拝むように手を合わせた。叔母さんはためらっていたようだけど結局小
さくうなずいてくれた。

 両親と明日香に気がつかれずにそっと病室を抜けた僕は救急病棟の待合室を見渡した。
体格のいい二人組はもうそこには姿が見えなかった。

 病院の救急用の出入り口まで駆けていったところで、僕は平井さんともう一人の私服の
刑事がパトカーではなく一見普通の乗用車のように見える黒塗りのセダンの車に乗り込も
うとしているところを見つけた。

「すいません」

 僕は少し離れた場所から思い切って平井さんに声をかけた。

 平井さんはこちらを見て柄の悪い鋭い目を細めた。

「おまえ、明日香ちゃんの兄ちゃんか」

 平井さんは病院から出たときに咥えたらしいまだ火のついていない煙草を口から離して
言った。


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