387:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/23(火) 22:58:11.17 ID:o4ymIMCXo
「いえ。聞いたことないです」
「そうか。この界隈の中高生の間ではちっとばかし有名な女なんだけどな」
そう言われても僕には初耳だった。女帝とかドラマじゃあるまいし随分大袈裟なネーミ
ングだ。
「そう。ドラマじゃねえしな。大袈裟に聞こえるだろう」
平井さんは僕の気持ちを見抜いたように言った。
「族とかヤンキーとかチーマーとか、昔から粋がりたいガキはこのあたりにもいっぱいい
たんだ。でもそいつらは無軌道に騒いで悪さをしてたくらいでな。組織立って悪事を働く
奴なんて今までは聞いたことがなかったよ、俺も」
「そうでしょうね」
「おう。第一そんなに頭が働いて、仲間を統制できるような玉なんて普通は不良高校生の
中になんていねえからな」
平井さんは言った。
「それがな。最近妙なことに悪さをしている連中がおとなしくなりやがった。夜道で女の
子を襲ったり互いに殴り合いの喧嘩をして俺たちに面倒をかけている連中が、そういう揉
め事を起こさなくなったんだよな」
「それはいいことじゃないんですか」
「まあ、そう思うよな。普通は」
「それはどういう意味です?」
「その前におまえが言った太田有希って子の素性を話してもらおう」
僕は一瞬ためらった。有希は奈緒の親友で明日香の友だちでもあった。そして明日香と
ともに有希と一緒に過ごした冬休みのことが思い起こされた。奈緒に会えない僕はその寂
しさを有希にはずいぶん癒してもらったものだ。
それでも僕は直感的に有希の言動に疑惑を抱いていた。全部、状況証拠に過ぎないけど
彼女が全く無関係な訳はない。それに間違っているのならそれがわかればいいのだ。警察
に話せばそのことがはっきりするかもしれない。
「太田有希は富士峰女学院中等部の二年生の女の子です。明日香の知り合いでもありま
すけど」
奈緒はこの話には関係ない。だから僕はそのときはあえて奈緒の名前は出さなかった。
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