過去ログ - ビッチ
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399:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/28(日) 22:52:53.85 ID:cCVWXsHpo

「まあ兄ちゃんの話はわかったよ。太田有希のことは俺らも気をつけておこう。これから
やつらの事情聴取だから、それとなく探りを入れてみることにするよ」
 平井さんは車に乗ろうとした。「それでいいな? 俺の方も話せる限りのことは兄ちゃ
んに話したぜ」」

「はい。ありがとうございました」

 そのとき再び平井さんが俺の方を見た。

「おまえ、やる気なのか」

「やる気って・・・・・・何を言っているのかわからないですけど」

 平井さんは僕のその言葉を聞いて眠そうな目を少しだけ開いた。僕は平井さんの言葉に
戸惑っていただけだったのに、平井さんはそうは受け取らなかったようだ。

「そうか。やる気なのか。じゃあまあ気をつけろよ」

 そしてもう平井さんは僕の方を見ないで車の助手席に収まった。

「じゃあな」

 何かに腹を立てているかのように加山さんが乱暴にアクセルを踏んだらしい。その警察
車両はタイヤのきしむ音を病院中に響かせながら走り去って行った。あれでは加山さんは
また平井さんに怒られるだろう。

「用事は終った?」

 走り去る車を見送っているといつのまにかいたらしい玲子叔母さんに背後から声をかけ
られた。

「うん。さっきはありがとう」

 僕は叔母さんに言った。

「・・・・・・別にいいけど。奈緒人、あんた本当にやる気なの?」

 何なんだ、いったい。さっきから平井さんと叔母といい。僕は単に有希と明日香の受難
との関係が気になっただけなのに。

「まあいいや。あたしにできることなら何でも言いな。明日香のためならあたしも協力す
るから」

「いや、叔母さん」

 僕は叔母さんの誤解を解こうとしたけど、叔母さんはもう頭を切り替えていた。

「それより奈緒人、明日香があんたと話したいって」

「うん。父さんたちは?」

「仕事に戻ったよ。今日はずっと明日香に付いてるって言ったんだけど、明日香が自分は
大丈夫だから仕事に戻ってって」

 こんな状況なのに明日香は両親の仕事を気遣ったようだった。これに関しては他の人に
はわからないかもしれない。でも僕と明日香には両親の仕事を優先することは当然のこと
だった。

 我が家の生活が成り立っていたのは両親が昼夜なく仕事をしているせいなのだ。

 もちろん寂しく感じないなんてことはない。でも寂しくたってやることはやらないと僕
も明日香もここまで行き抜くことすらできなかっただろう。

 だから普段の家事や身辺の雑事にしても、他の同級生たちと比べたら遊びまくっていた
明日香だってはるかによくやっていた方だと思う。

 明日香は自分がこんな仕打ちにあった時ですら両親の仕事を心配している。半分くらい
は自業自得と思わないでもないけれども、その動機には疑いの余地はない。明日香の行動
は全て僕のことを思いやってのことだったのだ。

「とにかく病室に戻ろう」

 叔母さんが僕を急かした。


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