400:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/28(日) 22:53:35.20 ID:cCVWXsHpo
病室に入ると僕に気がついた包帯だらけの明日香が点滴を受けていない方の手を僕に向
かって伸ばした。僕は差し出された明日香の手を握りながらベッドの脇の椅子に腰掛けた。
「ごめん」
最初に明日香はそう言った。さっき明日香が母さんに話しかけたときと同じ言葉だけど、
言葉に込められた意味はきっとそれとは違っていたのだろう。
「いや。おまえが無事ならそれでいいよ」
明日香が僕の手を握っている自分の手に力を込めたけど、それはずいぶん弱々しい感じ
だった。
「あたしね、いきなり飯田に話しかけられてさ。奈緒のことで話しておきたいことがある
から俺の部屋に行こうって」
奈緒のこと? 何で飯田が奈緒のことを、僕の妹のことを知っているんだ。僕は混乱し
た。明日香とその仲間たちは直接奈緒との接点はないはずだ。明日香以外で奈緒と池山た
ちを知っている可能性があるのは。
やはり有希は女帝なのだろうか。
「何で飯田がそんなことを知っているのか気になったから、あたしつい飯田の部屋につい
て行って」
「うん。そこはもう詳しく言わないでいいよ」
僕は明日香を気遣ったけど、明日香はかすかに顔を横に振って話を続けた。
「それで、部屋に入ったらいきなりベッドに押し倒されて後ろ手に縛られて、あたしが抵
抗したらすごく恐い目で睨まれて何度も顔を叩かれたの」
明日香は低い声で続けた。
「・・・・・・もういいよ」
「うん。そしたらいきなりドアが開いて池山が入ってきて飯田に殴りかかって、あっとい
う間に飯田のこと殴り倒しちゃったの」
それでは池山が明日香を助けたというのは嘘ではないのだ。
「池山はあたしの手を解いてくれて、すぐに家に帰れって言ったの。これから警察に電話
するし巻き込まれたくなければすぐにここから出て行けって」
「そうか」
自分の別れた女を飯田から救うことくらいは理解できる話ではある。でも警察に電話す
るなんていったいどういうつもりだったのだろう。個人的に飯田のことをぼこぼこにする
くらいはあの金髪ピアスの男ならやりそうだ。でも警察にチクルなんて池山らしくない。
ましてさっき平井さんから聞いた話が事実だとすると、飯田も池山も女帝の下でドラッ
グの販売とかに手を染めていたはずで、そんな池山が警察に電話すること自体が理解しが
たい。
「あたし、本当にもう池山のことなんて何とも思っていないんだよ。あたしが今好きな人
はお兄ちゃんだけだし」
突然の明日香の告白に僕は狼狽した。背後で立っているはずの玲子叔母さんのことも気
になった。
「でもね、あたしが逃げちゃったら池山が飯田を殴った犯人にされるかもしれない。あた
しは池山に助けられたんだから、そこにいて証言しなくちゃって思ったの」
明日香が言うには池山は何度も早く家に帰れと言ったらしい。自分のことは構わないか
ら、おまえはこんなことに関わりになるような女じゃないからと必死な表情で。
「・・・・・・前から池山はあたしのことを過大評価していたから。あたしが清純で穢れのない
女の子だと思い込みたかったみたい」
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