401:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/28(日) 22:54:18.03 ID:cCVWXsHpo
「もういい。わかったから。今はもう思い出すな。辛いだろ」
明日香僕の手を一端離した。
「もっと近くに来て。お兄ちゃん」
僕が言われたとおりにすると、明日香は片手で僕の腕に抱きつくようにした。明日香の
顔が僕の顔のすぐ横に来た。
「お兄ちゃん聞いて」
「・・・・・・席外そうか」
叔母さんが聞いた。
「いい。叔母さんも聞いてて」
「いいのかよ」
叔母さんが戸惑ったようにぶつぶつ言った。
「お兄ちゃん、今度こそ真剣に言うね。あたしお兄ちゃんにはいろいろ辛く当たってきた
けど、本当はお兄ちゃんのことが好き」
僕の頬に触れている明日香の瞳から湿った感触がする。
「あたし、奈緒のこと大嫌いだった。うちの家庭を壊した女の娘で、今またお兄ちゃんを
惑して傷つけようとしているあのビッチのことが」
「奈緒はそんな子じゃないよ」
僕は辛うじて反論した。
「うん。今にして思えばそうかもしれないね。あたし多分奈緒に嫉妬していたのかもしれ
ない」
「どういうこと」
「十年以上も会っていなくて、久しぶりに一度だけ会っただけでお兄ちゃんを夢中にさせ
た奈緒に、あたしは嫉妬していたんだと思う。あたしが素直になって自分の気持ちに気が
ついたのは、お兄ちゃんと奈緒が付き合い出してからだったし」
「明日香」
「返事は急がない。でもあたしはお兄ちゃんとは血が繋がっていないし、奈緒と違ってお
兄ちゃんとは付き合えるし結婚だってできるはず」
「結婚って」
「例え話だよ。あたし飯田に乱暴されそうになったとき、お兄ちゃんのことが頭に浮かん
だの。池山でもなくママでもなく」
明日香は僕から顔を離して僕の顔を見た。顔には痛々しく包帯が巻かれていたけど、そ
れは何かの重荷を降ろしたような幸せそうな表情だった。こんな明日香は初めてだった。
「あたしが好きなのはお兄ちゃんだけ。でも返事は急がないからよく考えてね」
「・・・・・・明日香」
「そろそろ検診の時間ですから、面会時間はここまでですよ」
そのときさっきの看護師が部屋に入って来て言った。
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