過去ログ - ビッチ
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414:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/29(月) 23:44:52.46 ID:sMDby2FSo

 翌朝、叔母さんは家まで車で僕を迎えに来てくれた。叔母さんの車の音はすぐにわかる。
それは周囲に響くような重低音だった。明らかに近所迷惑としか思えないのだけど、叔母
さんはそのシルバーの古い国産のクーペを大切にしていたし自慢もしていた。

「おはよう叔母さん」

 僕は玄関から外に出た。

「おはよう奈緒人。何か雪でも降りそうな天気だね」

 叔母さんが車の中でハンドルを握りながら言った。

「叔母さん、朝なんだからあまりエンジンの空吹かししないでよ」

「悪い。ちょっと調子が悪くてさ。じゃあ行こうか」

 僕は叔母さんの車の助手席に乗り込んだ。スポーツカーらしくひどく腰がシートに沈み
込みフロントウィンドウから見る景色がとても低いように感じる。

「明日香の保険証持ってきた?」

「うん。持ってきたよ」

「じゃあ行こう。あ、帰りは明日香が助手席な。後ろの席は狭いし怪我人にはつらいから
ね」

 叔母さんの車はツーシーターではないのだけれど、後席は飾りみたいなものだった。や
たらに狭いし天井も低い。とても長く人が乗っていられるような空間ではない。

「叔母さんも普通の車に買い換えたら?」

「普通の車じゃん」

 叔母さんがアクセルを踏んだ。車は急発進して坂を下りだした。まるで昨日の加山さん
の運転のようだった。

「叔母さん、ここスクールゾーンだからスピード出しちゃ駄目だよ」

「お、いけね」

 やがて叔母さんの運転する車は環状線に入った。妹の入院している病院はうちからはそ
んなに遠くないのだけど、平日の朝は病院までの国道は通勤の車で渋滞していてなかなか
目的地の近くに辿り着く様子がない。

「叔母さんさ」

 僕は信号待ちでも工事でもないのに一向に動かない車の中でハンドルを握っている叔母
さんに言った。

「うん」

「昨日叔母さん言ってたでしょ? 本当にやる気なのって」

「言ったよ。そんであたしは反対しないよ。というかあたしも手伝うよ」

「手伝うって」

「結城さんや姉さんには言わない方がいいとは思うけどね」

 僕は混乱してきた。


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