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434:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/31(水) 23:40:13.31 ID:z8naSqP5o

 それでもつらい目にあった明日香がはしゃいでいる様子を見るのは正直ほっとした。だ
からとても気まずいけれど僕は叔母さんに関する明日香の悪ふざけを本気で怒るわけにも
いかなかった。

 さいわいなことに病室の外の廊下で待たされている間に室内から聞こえてくる明日香と
叔母さんの会話は主にファッション関係の話らしかった。明日香の興味が叔母さんが買っ
てきた服の方に移ったのだろう。

「お待たせ」

 ドアが開いて明日香と叔母さんが並んで出て来た。顔や腕にまだ包帯が巻かれているの
で痛々しい感じは残っているけど、新しい服に着替えたせいか明日香はだいぶ元気な様子
に見えた。

「ほら、この服ちょっと大人っぽいでしょ」

 明日香が僕に言った。

「こないだまでの明日香のファッションはケバ過ぎて見ていられなかったからね」
 叔母さんが笑って言った。「これくらいシックな方がいいよ」

 こうして明日香と叔母さんが並んで立っているとまるで少し年の離れたお洒落な姉妹の
ようだ。とても叔母と姪には見えない。

「じゃあ帰ろうか。さすがに少し急がないと午後の約束に遅れそうだよ」

 叔母さんが言った。

 叔母さんが車を病院の入り口にまわしてきたので、まず僕が狭い後部座席に乗り込んだ。
それから明日香が無事に助手席に座ったのを確認してから叔母さんは車を発進させた。

「雪が降ってる」

 明日香が走り出した車の中から外を見て言った。朝、病院に向かっているときは陰鬱な
曇り空だったのだけど、病院を出る頃には細かい雪がちらほらと空から舞い落ちてきてい
た。

「こんなんじゃ積もらないだろうね」

「積もらなくて助かるよ。明日香は今週は登校しないからいいだろうけど、毎日出勤する
方の身になれよ」

 叔母さんが笑って言った。

「だって叔母さんは好きで今の仕事してるんだからいいじゃん」

「それはそうだけど・・・・・・ってそんなこと誰から聞いたの」

「パパが言ってた。玲子ちゃんは好きな仕事しているだけで幸せだからなって」

 叔母さんが顔をしかめた。

「何で結城さんがそんなこと言ったんだろ」

「叔母さんって何で結婚しないのってあたしがパパに聞いたの。そしたらパパがそう言っ
た」

「何であんたはそう余計なことを結城さんに聞くのよ」

「何でって言われてもなあ。ねえねえ、叔母さんってパパのこと好きだったの?」

「な、何言ってんのよ明日香」

 叔母さんが狼狽したように口ごもった。

「叔母さん、前! 前の信号、赤だって」

 僕の警告に気が付いた叔母さんは横断歩道の手前でタイヤを軋ませて車を急停止させた。

 車を急停止させた叔母さんは真っ赤な顔でじっと目の前の革張りの高価そうなステアリ
ングを見つめていた。


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