過去ログ - ビッチ
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447:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/11/02(金) 22:58:09.16 ID:2dnAe72Fo

 姉さんが立ち直って少しづつ元気を取り戻したのは偶然に結城さんと再会したからだっ
た。あたしは以前のように笑顔を見せるようになった姉さんのことが嬉しかった。姉さん
が久しぶりの笑顔で明日香を抱き上げる様子を見ると、依然として大学生活には未練があ
ったあたしも明日香の世話をすることがあまり苦にならなくなってきた。

 幼馴染だった結城さんと姉さんの再会と交友関係の復活が恋愛関係に変化するのに時間
は不要だったみたいだった。姉さんは結城さんの存在に心の平穏を見出したのだ。

 その頃の結城さんは自分の不在中に複数の男と浮気した挙句、大切な子どもたちを虐待
まがいにネグレクトした奥さんと離婚協議中だった。でもそれさえ片付けば二人は結ばれ
て改めて幸せな家庭を築けるだろう。

 こうして姉さんが旦那の不慮の死から立ち直っていくことは嬉しかったし、実家の両親
も素直に喜んだので家の雰囲気もよくなっていった。それでもこの変化によって新たな問
題も生じた。それは主にあたしの個人的な問題だった。

 あたしはは姉さんに紹介されて初めてあった結城さんに恋してしまったのだ。そしてそ
の不毛な恋から逃れようとあたしは気になっていた先輩が好きになったのだと自分に言い
聞かせ、そう思い込もうとしていた。



 いつのまにか明日香は公園の中央にある芝生のところで同じ年くらいの女の子と遊びだ
していた。この年代の子どもたちが仲良くなるなんて実に簡単なことらしい。

 明日香とその女の子は手をつないで一緒に逃げ惑う鳩を追いかけていた。明日香の足取
りもその女の子の足取りも危う気だった。互いに走る速度が違うのにお互いに手を離そう
としないからこれではすぐにでも転倒しそうな感じだ。さいわいにも地面は芝生が張って
あるし転んでもどうってことはないとあたしは思ったけど、すぐに考えを改めた。よその
子どもを怪我させてしまうとまずい。あたしは物思いにふけるのを中断して明日香を止め
ようと思った。

 そのとき小学生くらいの男の子が二人の後を追い駆け出した。

「こらナオ。あんまり走ると危ないよ」

 男の子の澄んだ声が響き渡った。

 その男の子のことは目に入っていたのだけど、この子が明日香と一緒に遊んでいる女の
子の連れだとは思わなかった。この子は女の子のお兄さんなのだろう。その子の声や表情
には妹を大切にしている様子が窺われてあたしは思わず微笑んだ。兄弟っていいものだ。
あたしだって姉さんのためにいろいろと自分を犠牲にしてきたのだけど、そのことで本気
で姉さんを恨んだことはなかった。血の繋がりってすごいんだなとあたしその子を眺めな
がら考えた。


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