471:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/11/05(月) 22:46:00.77 ID:NbEGfaswo
今頃は奈緒はどうしているのだろう。僕はふと考えた。まだ午前中の授業時間だから授
業に熱中しているのだろうか。それともピアノのことでも考えてるのか。
・・・・・・それとも。ひょっとしたら僕のことを考えているのかもしれない。つらかった別
れを経て久しぶりに再会できた兄のことを。奈緒が自分の実の妹であることを知った日
以来、僕は精神的には本当にまいっていたのだけど、奈緒にとってはそれはそういう受
け止め方をするような事実ではなかったようだ。
奈緒はすぐに僕が自分の兄であることを受け入れたばかりか、僕を抱きしめながら本当
に幸せそうな微笑みを浮べたのだ。僕は奈緒が真実を知らされることを恐れていた。出来
立ての自分の彼氏が恋愛対象として考えてはいけない相手だと知らされたときの奈緒がシ
ョックを受けて傷付くことを恐れたからだ。
奈緒は傷付くどころか喜んだ。僕だって妹との再会は嬉しくないはずはなかった。でも、
これほどまでに入れ込ん最初の恋人が付き合ってはいけない女の子だったと知ったときの
絶望感は僕の心に深く沈潜してなくなることはなかった。
僕ほどにショックを受けていないのは僕が兄だと知る前の僕のことを、奈緒がそれほど
愛してくれていたわけではないからなのだろうか。
その考えは僕を混乱させた。奈緒を傷つけたくないと思っていたはずの僕は、あろうこ
とか奈緒が僕と恋人同士ではいられなくなるという事実を知っても動揺しなかったことに
対してショックを受けたのだ。
いったい僕は何がしたいのだろう。過去に自分の記憶を封じ込めるほどにつらい過去が
あった。その話は玲子叔母さんが僕に話してくれたら今ではよく理解できていた。そのつ
らかった過去の一部が奈緒との再会によって癒されることになったのだ。
それなのに僕はこれ以上いったい何を求め、何を期待していたのだろう。つらい別れを
した兄貴と偶然に再会できて喜んでいる実の妹の態度に、僕は何が不満なのだろう。
突き詰めると簡単な話なのだろう。僕はあれだけ大切にしていた妹が再び僕のそばに
いてくれることだけでは満足できないのだ。要するに僕は奈緒のことを今でも妹としてで
はなく女としてしか見ていないのだろう。無邪気に兄との再会を喜んでいる奈緒の態度に、
僕は飽き足らない想いを感じているのだ。
本音を言えば、奈緒を傷つけたくない混乱させたくないと思いながらも奈緒が彼氏であ
る僕を失ったことを悲しんで欲しかったのだ。僕が奈緒に対して感じているのと同じ感情
で。奈緒と出合った日。奈緒と初めてキスした日。
僕はその思い出を今でも大切にしていた。そして僕は奈緒にもその想いを共有して欲し
かった。
奈緒は血の繋がった実の妹だった。それが理解できていた今でもなお、僕は奈緒に自分
のことを異性として意識していて欲しいと願っていたのだ。ちょうど今の僕が奈緒に対し
てそう考えているように。
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