474:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/11/05(月) 22:47:41.32 ID:NbEGfaswo
奈緒のことを考えていたと正直に明日香に話したのは失敗だったようだ。
そのときの僕は、明日香の話を聞いているうちに玲子叔母さんのことを一人の女性とし
て意識させられそうで、そのことがとても気まずかった。だから、本当は黙っていた方が
いいと思っていたのだけど、正直に奈緒のことを考えていたと話したのだった。
でも明日香が叔母さんのことを気にしているのも本当だろうけど、やはり明日香の一番
気に障る存在は奈緒のようだった。
奈緒が悪意をもって僕を陥れるために近づいたのだという誤解は解けたはずだった。あ
れは偶然の出会いだったのだ。それを理解してもなお、明日香の奈緒に対する敵愾心はち
っとも薄れていないようだ。
こうなってしまったら仕方がない。明日香が僕に対して敵愾心を持っていた頃、明日香
が切れたときは僕は反論せず怒りが収まるまでじっと耐えたものだった。それがどんなに
ひどい言いがかりであったとしても。久しぶりに今日もそうするしかないだろう。
それに今回は明日香の言っていることは単なる言いがかりではなかった。奈緒と兄妹し
て名乗りあったときの安堵感が消えていき、さっきから悩んでいるように僕が奈緒に対し
て再び恋愛感情を抱き出したことは事実なのだ。でもそれだけは明日香にも誰にも言って
はいけないことだ。
昔はよくあったことだった。ひたすら罵声に耐えているうちに明日香の声は記号と化し
意味を失う。そこまでいけば騒音に耐えているだけの状態になり、意味を聞き取って心が
傷付くこともない。久しぶりにあの頃は頻繁にあった我慢の時間を過ごせばいい。
そう思っていた僕だけど、どういうわけか明日香の言葉はいつまで耐えていてもその意
味を失わなかった。
「まさかお兄ちゃんは血の繋がった妹を自分の彼女にしたいの?」
以前と違って明日香の言葉は鮮明に僕の耳に届き僕の心に突き刺さった。
「実の妹とエッチしたいとかって考えているの?」
もうやめろ。やめてくれ。
以前と違った反応が僕の中で起きた。僕はまたフラッシュバックを起こしたのだ。視界
が歪んでぐるぐる回りだす。叔母さんや奈緒の声が無秩序にでも鮮明に聞こえてきた。
『奈緒人・・・・・・あんた、まさか本気で自分の妹と付き合う気?』
『鈴木奈緒はあんたの本当の妹なのに』
叔母さんの驚愕したような声。
『あたしピアノをやめます。そしたら毎日ナオトさんと会えるようになりますけど、そう
したらあたしのこと嫌いにならないでいてくれますか』
『それでナオトさんがあたしと別れないでくれるなら、今日からもう二度とピアノは弾き
ません』
『あたしのこと、どうして嫌いになったんですか? ピアノばかり練習していてナオトさ
んと冬休みに会わなかったからじゃないんですか』
僕を見上げる奈緒の縋りつくような涙混まじりの目。
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