475:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/11/05(月) 22:48:14.00 ID:NbEGfaswo
「お兄ちゃんごめん」
気がつくと僕はソファで横になっていた。明日香の顔が間近に感じる。
「・・・・・・まったやっちゃったか。ごめん明日香」
明日香が僕を抱いている手に力を込めた。
「あたしが悪いの。自分でもよくわからないけど、奈緒のことを考えたらすごく悲しくな
って、でも頭には血が上ってかっとなっちゃった。本当にごめんなさい」
代償は大きかったけど、でもこれでようやく明日香の気持ちはおさまったようだった。
僕は安堵したけど、もちろん事実としては何も解決していないことは理解できていた。
明日香はもう何も喋らずに僕に覆いかぶさるように横になった。思ってたより重いな、
こいつ。僕は何となくそう思った。全身が汗びっしょりで体が体温を失って冷えていくの
を感じる。
明日香の包帯を巻いた手が僕の額の汗を拭うようにした。明日香の手に僕の汗がついて
しまうのに。そのまま明日香は僕の頭を撫でるように手を動かした。それはずいぶんと僕
の心を安定させてくれた。
やはり奈緒への恋心、つまり自分の実の妹への恋愛感情は無益なだけでなく有害ですら
ある。世間的にどうこう以前に自分の心理ですらその禁忌に耐えることすらできていない。
再びフラッシュバックに襲われた僕はやっと冷静に考えられるようになった。きっと明
日香の言うとおりなのだろう。もうこれは本当に終らせなければならないのだ。
それに僕の恋は無邪気に兄との再会を喜んでいる奈緒をも戸惑わせ傷つけることになる
かもしれない。兄としての僕への奈緒の想いの深さは、恋人が実は兄だったという事実を
も圧倒したため、奈緒は僕のように傷付かずに済んだのだろう。それを蒸し返せば今度こ
そ奈緒を深く傷つけることになるかもしれない。
奈緒が僕のように胃液を吐きながらフラッシュバックにのたうちまわって苦しんでいる
姿が浮かんだ。
だめだ。自分の大切な妹にそんな仕打ちをするわけにはいかない。奈緒への無益な恋心
に惑わされていた僕がそれに気がつけたのは、明日香のおかげだった。確かにきつく苦し
い荒療治だったけど、そのおかげで僕は目が覚めたのだろう。
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