583:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/11/20(火) 00:15:27.30 ID:c7WRVhhio
僕はゆっくりとうなずいた。
「うん。明日香と付き合うことになった」
「ほらね」
有希が小さく笑って言った。
「兄貴思いの妹の行動だったって言いたいみたいだけど、結局明日香は望んでいたものを
手に入れてるんじゃない」
結果としてはそうなる。それは否定できない事実だった。
「あのときあたし、明日香にとって都合のいい話だって言ったけど結局そのとおりだった
わけね」
「でも、明日香だって最初は純粋に僕を救うつもりだったんだ。途中で僕のことを好きに
なったのは事実だと思うけど・・・・・・」
僕の言葉は途中で途切れた。さっきまで笑っていた有希の目に涙が浮かんでいることに
気がついたからだ。
「あたしは奈緒人さんが好きだった。ちょっとしか会っていないのにおかしいかもしれな
いけど。でも明日香の言うとおり万が一奈緒人さんがあたしのことを気にしてくれていた
としても、あたしは奈緒人さんと付き合う気はなかったの。奈緒ちゃんを傷つけたくなか
ったから」
それは以前にも二人で大晦日の買出しに出かけたとき聞いていた話だった。
「今では奈緒ちゃんは奈緒人さんのことを再会できた大切なお兄さんだと思っているから、
本当はあたしにもチャンスだったのにね」
有希は涙を浮べたまま再び微笑んだ。
「でも今では明日香が奈緒人さんの隣に座ってるんだね」
「ごめん」
こんな間抜な返事しか口を出てこなかった。
「奈緒人さんのことは恨んでないよ。逆にあたしが謝らなければいけないの。でも明日香
は・・・・・・」
「有希さん」
有希は俯いた。彼女が明日香を許す気がないことは明白だった。やがて彼女は顔を上げた。
「今日はもう帰る」
「うん」
僕には他にかける言葉が思いつかなかった。最後に有希は涙をそっと片手で払いながら
意味深なことを言った。
「明日香のそういう手段を選ばないやり方が、奈緒ちゃんには向けられていないといい
ね」
どういう意味かを聞き返す暇もなく彼女はもう後ろを振り向かず、僕を残してファミレ
スを出て行ってしまった。
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