593:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/11/21(水) 23:25:36.59 ID:lZg7FiiSo
シャワーから出たあたしはいつもの癖で体だけをざっと拭いただけで、そのまま裸でキ
ッチンの冷蔵庫から缶ビールを取り出しソファに勢い良く座った。缶ビールを飲む前にあ
たしは携帯のメールをチェックした。七〜八本くらい着信しているメールは全て仕事の連
絡事項だったけど、急ぎのものは一つもない。これで今夜はこのままビールを飲んでゆっ
くりと夜を過ごせる。あたしはほっとしてそう思った。
携帯をソファの脇のコーナーテーブルに置こうとしたとき、新しいメールが着信した。
とりあえずビールの最初の一口を我慢することにしてあたしはそのメールを開いた。
それは池山からのメールだった。彼の捨てアドに送ったメールに返事が届いたのだ。あ
たしはその内容を読んだ。
本文『もう話せることは全部話しましたよ。でもあんたは渡さんの知り合いみたいだし、
どうしてもというなら明日の午前十時にこの場所に来てください。でも話せることはもう
あまりないです』
池山は聞きたいことがあったらいつでも聞いてくれと言って、この捨てアドを酒井さん
に渡したくせに、あたしに対してはもう話すことはないとはいったい何という言い草だ。
まだ高校生のくせに女性差別主義者なのだろうか。あたしはその内容にはむかついたし、
こいつの指定してきた場所も気に食わなかった。このまえ会ったファミレスでもいいのに、
池山が指定してきたのは駅で言うと四駅くらい離れた町だった。しかもわかりづらい場所
にある喫茶店だ。
こんなわけのわからない場所に一回しか会っていない女性を呼び出すとはどういうつも
りなのだ。普通ならこんな怪しげな場所に出向くことはないだろうけど、このときのあた
しには少しは叔母らしいことをしたいという強い気持ちがあった。
別に本気で奈緒人とどうこうなろうなんて思いはしないけど、このことでこれだけ本気
で悩んだり胸を高鳴らせた時点で、あたしの中ではそれは明日香への裏切りも同様だった。
だからあたしは少しでも明日香のために奈緒人の手伝いがしたかったのだ。偶然だけど、
あたしは仕事のつてで池山と知り合うことができた。この機会を無にすることはない。
あたしそう決心して短く返信した。明日その時間の指定の喫茶店で待っているという内
容のメールを。それに対してすぐに短い返信が来た。
本文『了解です。でも本当に話すことなんてないっすよ』
面と向かったときの態度はひどいものだった池山はメールでは一応敬語を使っていたけ
ど、その内容は人のことを小バカにしているようだ。どこまでもムカつくやつだ。本当に
もう何も話すことがないのかどうかあたしが聞き出してやる。
あたしはようやくビールのことを思い出して手に持っているビールを一口喉に流し込ん
だ。それで少し落ち着いたあたしは取材のときに池山が教えてくれた話を思い返した。そ
れは彼らの商売の拠点となっているホームページのことだった。
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