598:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/11/21(水) 23:31:06.19 ID:lZg7FiiSo
あたしは環状線を降りて慣れない市街地の道路に入った。そろそろ思い出を反芻するの
を止めてまじめに目的地を見つけなきゃ。
後付したナビの画面だと池山に指定された住所にそろそろ到着しているはずだった。あ
たしは路肩に車を寄せてハザードを出して停車した。
目的の喫茶店はそこから路地を入ったところにあるはずだった。あたしは車を降りずに
念のために周囲を見渡したけど池山らしい人物の姿はない。時間はちょうど約束の五分前
になっていた。
目の前にそびえる商業ビルとマンションらしいビルの間に細い路地があるのが見えた。
多分ここを入って行ったところに待ち合わせ場所があるのだろう。あたしは一度車を出し
た。少し走ると時間貸しの無人の有料駐車場があった。あたしは車を止めた。
小型のICレコーダー、カメラ、取材用のメモと筆記用具がハンドバッグの中に揃って
いることを確認してあたしは車を降りた。すぐにビニール傘を開く。雨はだんだんと強くなって行くようだった。
車をロックしたあたしは少し歩いてその路地の前に来た。五分くらい歩いただけで服は
上下とももうびしょ濡れだった。周囲を見渡しても相変わらず人の姿はない。あたしは傘
を差したまま降りしきる雨の中、その路地に入って行った。
路地を歩いていると喫茶店の看板が雨に打たれたまま路面に置かれているのが見えた。
よかった。待ち合わせ場所はあそこだ。あたしは路上で雨に打たれているその喫茶店の看
板の方に歩いて行った。そのとき背後に水溜りの水面を破って駆け寄ってくる複数の足音
聞こえた。
振り替える間もなくあたしはいきなり現われた男たちに体を羽交い絞めにされた。必死
でもがいて抵抗したけど、まるで全身を縛られているように身動きひとつできなかった。
悲鳴を上げようとしたく口も見知らぬ男の一人にふさがれて声もあげられない。
身動きできない状態のまま半ば体を抱きかかえられるようにされながら、あたしはこの
男たちにどこかに連れて行かれようとしていることを理解した。
抵抗もできず悲鳴すらあげられないあたしがせめて相手の顔を見ようとしたそのとき、
お腹に重い衝撃を感じた。殴られたか蹴られたかしたのだ。思わず我慢できずに胃液を吐
こうとあたしは、彼らに口を押さえられそれすら許されなかった。
「ぐずぐずするな。人に見られちまうだろうが」
思っていたより若い男の声が聞こえた。それを最後に目の前が急に暗くなった。意識が
失われていったのだった。
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