62:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/03(月) 23:33:52.21 ID:euF2FmBAo
翌朝登校の支度を済ませて僕が階下に下りていくと、珍しく父さんと母さん、それに
妹が既にキッチンのテーブルについて朝食を取っていた。
昨日僕が眠ってしまった後の遅い時間に両親は帰宅したのだろう。この様子だとあま
り眠れなかったではないかと僕は両親を見て思った。
「おはようナオト」
「おはようナオト君、何か久しぶりね」
両親が同時に僕に微笑んで挨拶してくれた。久しぶりに両親に会って笑って声をかけ
てくれるのは嬉しいのだけど、こういう時いつも僕は妹の反応が気になった。
父さんはともかく母さんは常に僕に優しかった。母さんが自分の本当の母親ではない
と知らされたとき、僕は母さんが途中で自分の息子になった僕に気を遣って優しく振る
舞っているのだろうとひねくれたことを考えたこともあった。
でもそういう偽りならどこかでぼろが出ていただろう。それに気に入らない義理の息
子に気を遣っているにしては母さんの笑顔はあまりに自然だった。
それでいつの間にか僕はそういうひねくれた感情を捨てて、素直に母さんと笑顔で話
ができるようになったのだった。今の僕は父さんと同じくらい母さんのことを信頼して
いる。
ただ唯一の問題は妹の明日香だった。無理もないけど明日香は昔から自分の母親を僕
に取られたように感じていたらしい。僕が母さんが義理の母親だと知ってからも母さん
を信頼するようになって、前よりも母さんと仲良くなってからは、明日香は僕のことを
ひどく嫌って、反抗的になった。
挙句に服装が派手になり髪を染めるようになり遊び歩くようになったのだった。僕と
は違う自分を演出するつもりだったのだろうけど、もちろん母さんと明日香の関係にお
いてもそれは良い影響なんて何も及ぼさなかったのだ。
やがて母さんは明日香の生活態度をきつく注意するようになった。母さんに「何でお
兄ちゃんはちゃんと出来てるのにあんたはできないの」と言われた後の妹の切れっぷり
は凄まじかった。その時明日香はやり場のない怒りを全て僕に向けたのだった。
こういう両親と過ごす朝のひと時は妹さえいなければ僕の大切な時間だったのだけ
ど、両親の僕に向けた柔らかな態度に明日香はまた一悶着起こすのだろうと僕は覚悟し
てテーブルについた。
「おはよう」
僕は誰にともなく言った。妹がそう思うなら自分に向けられた挨拶だと思ってくれて
もよかった。
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