627:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/11/25(日) 23:53:41.30 ID:IlNJVsp/o
でも考えてみればおかしい。俺が酒井さんと玲子に一度取材を受けたことは有希も承知
していたしそのことを大袈裟には受け取っていなかったのだ。たかがもう一度取材したい
と言われたくらいで検挙されたらやばいことを玲子に対して仕掛けるなんて有希らしくな
い。
有希はただ首を突っ込んできた玲子を排除したいだけじゃない。きっと犯されて惨めな
想いをさせられた玲子のことを伝えて、明日香を絶望させるつもりなのかもしれない。き
っと明日香には俺が玲子を犯したということまで伝えるつもりなのだろう。自分の振った
元彼が明日香の叔母さんをひどい目に合わせたことを思い知らせて、明日香が自分のこと
を責めて絶望するように。
ちくしょう。俺はさっきまで感じていた有希への恐れを忘れて腹が立ってきた。
俺は有希に利用されているのだ。俺の鼻先に玲子を一番最初に自由にさせてやるという
餌と明日香が兄貴と付き合って俺をコケにしたという情報をセットにして、俺を奮い立た
せて操ろうとしているのだ。そう考えると有希と争うのは得策ではないと考えていた大前
提が自分の中で崩れていった。
俺をコケにしたのは明日香よりもむしろ有希だった。俺は有希の手下じゃない。便宜上
利害が一致していたから有希に従っていただけで、そのことは俺の仲間たちにも共通の認
識になっていた。有希が俺を一方的に利用しようとした以上、俺にはもう有希に従う義理
はない。俺の中で有希に玲子を襲うように言われてからずっと燻っていた困惑が影を潜め、
逆に有希に対する反発と闘争心が沸いてきた。
玲子を助けよう。
それはもはや振られても忘れられない明日香のためだけにするのではない。有希にいい
ように利用されかけた自分自身のためだ。
指示に反した俺に対して有希は厳しい懲罰を仕掛けてくるだろう。でも俺が声をかけれ
ば前からの仲間たちは俺に従うだろう。仲間内でもやや有希寄りだった飯田も今はいない
ことだし。直接的な暴力的に対しては有希自身は無力だ。問題は有希に従う他のグループ
の連中だけど、俺のグループは多分有希に従ういくつものグループの中で最大規模だ。
仲間が結束して有希に忠誠を誓っているグループの連中を順番に片付けていけばいい。
そう決心した俺は机の引き出しからアッパー系のハーブを取り出した。いつでも吸える
ように煙草の中にはハーブが仕込んである。
俺は自分の散らかった下宿の布団の上に横になってハーブを吸った。仲間を招集する暇
はないからとりあえず一人で玲子を救い出そう。少なくとも俺が顔を出すまでは玲子の体
は全然のはずだった。それは裸にされたり静脈注射されたりはするかもしれないけど。
玲子を一人で救うためにはどういう作戦で行けばいいか。やがて化学物質が脳内に分泌さ
れ俺は高揚感に包まれた。同時に頭の隅では冷静に明日すべきことが思い浮び、整理され
て記憶されていった。
これでいい。俺の高揚した状態は眠りにつくまで続いた。
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