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641:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/11/27(火) 22:42:46.25 ID:26vxZsPMo

 俺は思わず口汚く罵った。オーバードーズじゃねえか。あいつらリキッドをちゃんと希
釈して注射しなかったのか。

 これはまずい。

 玲子の体に手を触れることにためらいはあったけど俺は彼女の動悸を確かめた。規則正
しいとは言えないけどすぐにでも危険と言うほどの心拍数ではない。呼吸も安定している
ようだ。俺は少しほっとした。

 オーバードーズになったやつのことを今までもよく見てきた。一番やばいのは飛びすぎ
てイっちゃっているやつだ。そういうやつは意識もあるし行動もできるけど、その態度は
滅茶苦茶だ。事件を起こすやつはたいていはこういう部類だ。次に玲子のように意識を失
うやつだけど、本当にやばい状態のやつは心拍数も呼吸も異様に早い。

 これなら命には別条ないだろう。玲子の命に危険がないことを確認した俺は、それを喜
ぶどころかこの先どうしたらいいかわからなくなっていた。玲子に意識があるなら俺のこ
とを信用させて一緒に逃げ出すつもりだった。あの三人をぶっ飛ばしてでも。

 でも意識のない玲子を抱えてそんなことをする自信はない。いくら華奢だとはいえ気を
失っている女を抱えながら逃げるなんて不可能だ。俺は狼狽した。

 部屋の外には自分の順番を奮い立って待ち構えているやつらがいる。いつまでも悩んで
いる時間はない。

 再び昨日の決心が思い浮んだ。あのとき感じた高揚感はもはや欠片もない。簡単な話じ
ゃないか。俺は少し気弱になって考えた。昨日の決心は忘れ、この場で玲子に覆いかぶさ
って犯せばそれですむ。その後に室外で順番を待っているやつらに玲子を譲るのだ。それ
で俺は安泰だ。有希の指示を完璧に果たしたことになる。

 迷った俺は再び玲子の顔を眺めた。多分無意識だったのだろうけどそのとき玲子は少し
顔をしかめるようにした。その表情は何か困ったことに出合ったときの明日香の表情にそ
くりだった。

 いや、だめだ。明日香を悲しませないと決めたことを覆すことはできない。これ以上迷
っている時間はなかった。

 俺は玲子の手足を縛って固定しているロープをナイフで切断した。ぐんにゃりとした玲
子の体を抱えて上半身を起こさせる。華奢な骨格やすべすべした肌の感触がしたけど今は
そんなことはどうでもよかった。

 全部着せるのは無理だ、とりあえず下着は無視して床の上に散らばった服をかき集めた。
見かけだけそれっぽければもうそれで満足するしかない。玲子は多少意識が戻って来たよ
うだった。

 人形のような彼女にブラウスとスカート、それにジャケットだけを辛うじて着せる。さ
ぞ苦労するかと思ったのだけど、玲子は腕を伸ばしたり腰を上げたりして半ば無意識に服
を着せる俺に協力してくれた。

「ちょっとここでじっとしてろ」

 服を着せ終わった俺は玲子に言った。理解してくれるかどうかはわからないけど。

「うん」

 すごく小さな声で玲子が呟いた。意識が覚醒しつつあるのだ。時間があれば砂糖水を大
量に飲ませて薬物を排泄させるべきなのだけど。

 俺は玲子を置いてドアの方に向かった。尻ポケットから久しぶりに使う警棒を取り出し
て。一撃でやらなければならない。最初の目論見と違って今や俺は自力では歩けない玲子
を抱えて逃走しなければならないのだ。確実に追手の足を止めておかないと。

 集中しながらドアを開けてあの三人に立ち向かおうとしている俺に背後から声がかけら
れた。掠れて力のない声で。

「お願い、奈緒人・・・・・・。早く帰ってきて」


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