過去ログ - ビッチ
1- 20
735:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/18(火) 00:22:47.66 ID:BV7gZxrgo

 一瞬、何か心に痛みが走った。麻季が他の男と寄り添って一緒に歩いている。それだけ
のことに僕はこんなに動揺したのだった。よく考えれば僕だって理恵と並んで歩いている
のに。隣で話している理恵の声が消え僕は自分の心が傷付くだろうことを承知のうえで麻
季の方を見つめた。

 でも何か様子がおかしかった。僕が見つめている先に一緒にいる男女は何かいさかいを
起こしているようだった。自分の肩を押さえた男の手を麻季は振り払っていた。

「それでね、玲子ったら結局あたしの買ったCDを勝手に学校に持って行っちゃってね」

「・・・・・・うん」

 手を振り払われた男は麻季のその行為に唖然とした様子だったけど、すぐに憤ったよう
に麻季の顔を平手打ちした。麻季の体が地面に崩れた。

「でね、あいつったら勝手に友だちに貸して」

「悪い」

 僕は驚いたように話を途中で中断した理恵を放って麻季と男の方に駆け出した。このと
きはよくわからないけど何だか夢中だった。とにかくあの麻季が暴力を振るわれているこ
とに我慢できなかったのだ。

 僕は中庭のベンチの横にいる二人の側まで走った。麻季は地面に崩れ落ちたままだ。激
昂した男が何か彼女に向かって言い募っている。再び男が手を上げたとき僕は二人の側に
到着した。

 先輩らしい男は僕を見た。そしてその先輩はか弱い女には手をあげたのだけど、まとも
に男相手に喧嘩する気はないようだった。

 きっと手を痛めつけられないのだろう。ピアノ科とか器楽科にいる連中なら無理もなか
った。普通音大には演奏系、作曲・指揮系、音楽教育系の学科がある。演奏系の学生にと
っては手は喧嘩ごときで傷めるわけにはいかない。逆に言うとこの先輩は、自分の大切な
手を女を殴るためなんかによくも使えたものだ。

 僕は音楽学を選考していたから実際の器楽の演奏にはそれほど執着がない。先輩が麻季
を虐めるのを止めないのならそれなりに考えがあった。でも駆けつけてきた僕を見て先輩
は急に冷静になったようで、人を馬鹿にするものいい加減にしろと倒れている麻季に言い
捨ててその場をそそくさと去って行った。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/1204.35 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice