738:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/18(火) 00:33:27.10 ID:BV7gZxrgo
それは思っていたより普通の恋愛関係だった。僕は麻季と付き合い出す前にも数人の女
の子と付き合ったことがあった。そのどれもがどういうわけか長続きしなかった。結果と
して麻季との付き合いが一番長く続くことになった。
あのとき麻季と付き合い出すことがなかったら、きっと僕は理恵に告白していただろう。
そして多分その想いは拒否されなかったのではないか。でも麻季と付き合い出してからは
自然と理恵と会うこともなくなっていった。理恵の方も遠慮していたのだと思うし、それ
よりも僕はいつも麻季と一緒だったから理恵に限らず他の女の子とわずかな時間にしろ二
人きりで過ごすような機会は無くなったのだった。
勢いで付き合い出したようなものだったけど、いざ自分の彼女にしてみると麻季は思っ
ていたほど難しい女ではなかった。こうしてべったりと一緒に過ごしていると、麻季の思
考は以前考えていたような難しいものではなかったのだ。
付き合い出す前はボーダーとかメンヘラとか彼女に失礼な考えが浮かんだことも確かだ
ったけど、いざ恋人同士になり麻季と親しくなっていくと意外と彼女は付き合いやすい恋
人だった。
多分、四六時中側にいるようになって僕が彼女が何を考えているのかをわかるようにな
ったからだろう。それに思っていたほど麻季はコミュ障ではなくて、相変わらず言葉足らずではあったけど、それでも僕は彼女の考えがある程度掴めるようになっていった。
彼女には嫉妬深いという一面もあったし、ひどく情が深いという一面もあった。そうい
うこれまで知らなかった麻季のことを少しづつ理解して行くことも、僕にとっては彼女と
付き合う上での楽しみになっていた。
僕が三回生になったとき麻季はお互いのアパートを行き来するのも面倒だからと微笑ん
で、ある日僕が帰宅すると僕のアパートに自分の家財道具と一緒に彼女がちょこんと座っ
ていた。合鍵は渡してあったのだけどこのときは随分驚いたものだ。
同棲を始めて以来、僕たちはあまり外出しなくなった。食事の用意も麻季が整えてくれ
る。意外と言っては彼女に失礼だったけど、麻季は家事が上手だった。そんな様子は同棲
を始める前は素振りにさえ見せなかったのに。
僕がインフルエンザにか罹って高熱を出して寝込んだとき、僕は初めて真剣に狼狽する
麻季の姿を見た。
「ねえ大丈夫? 救急車呼ぼうよ」
僕は高熱でぼうっとしながらも思わず微笑んで麻季の頭を撫でた。麻季は僕に抱きつい
てきた。
「インフルエンザが移るって。離れてろよ」
「やだ」
僕は麻季にキスされた。結局僕の回復後に麻季が寝込むことになり逆に僕が彼女を介抱
する羽目になったのだ。
この頃になるとサークルでも学内でも僕たちの付き合いは公認の様相を呈していた。麻
季は相変わらず目立っていた。やっかみ半分の噂さえ当時の僕には嬉しかったものだ。こ
れだけ人気のある麻季が心を許すのは僕だけなのだ。麻季の心の動きを知っているのは僕
だけだ。それに麻季自身が関心を持ち一心に愛している対象も僕だけなのだ。
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