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74:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/04(火) 22:24:40.96 ID:j6ezIR3ko

「あたしさ。思い出したのよ」

 電車に乗るといきなり女さんが言った。

「思い出したって何を?」

「ほら、今朝話したじゃん。ナオちゃんってどっかで見たことあるってさ」

 それは僕にも気になっていた話題だった。思ったより早く女さんは記憶を取り戻してく
れたようだった。

「はい、これ」

 女さんから渡されたのはどっかのWEBのページをプリントした数枚のA4の紙だった。

「何これ」

「さっきIT教室のパソコンからプリントしたんだよ。ナオちゃんってさ名前、鈴木奈
緒でいいんでしょ?」

 ナオの苗字や名前の漢字まで女さんは知らないはずだったのに。

「・・・・・・そうだけど」

「じゃあ、もう間違いないや」

 彼女は僕の手からプリントを取り返してそのページを上にして僕に渡した。

「ここ見て」



『東京都ジュニアクラッシク音楽コンクールピアノ部門中学生の部 受賞者発表』

『第一位 富士峰女学院中等部2年 鈴木奈緒』

『演目:カプースチン:8つの演奏会用練習曲 作品40 第5番「冗談」』

『表彰状、トロフィー、記念品、賞金30,000円の贈呈』



 プリントに印刷されているのはそれだけだったけどナオの名前の横に小さく顔写真が
掲載されていた。荒い画像だったけどその制服と何よりもその顔はナオのものだった。

「これさ、あたし生で見てたんだよね」
 女さんが言った。「従姉妹のお姉ちゃんがこの大学生部門に出場したんで応援しに行
ったの」

「その時にさ、何か中学生の部に出てたことがやたら可愛かった記憶があってさ。それ
でナオちゃんのこと覚えてたみたい」

 思い出せてすっきりした。そう言って女さんは笑った。


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