749:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/20(木) 23:24:00.45 ID:tOg9VqEDo
混乱する思考の中で僕は麻季に抱きつかれた。僕の唇を麻季がふさいだ。そのまま麻季
は僕を押し倒して覆いかぶさってきた。
「おい、よせよ」
「ごめんね・・・・・・しようよ」
彼女はソファに横になった僕の上に乗ったままで服を脱ぎ始めた。
僕は混乱して麻季を跳ね除けるように立ち上がったのだけど、その拍子に彼女は上着を
中途半端に脱ぎかけたまま床に倒れた。麻季が泣き始めた。
深夜になってようやく落ち着いた麻季から聞き出した話は僕を混乱させた。
麻季は浮気をしていたのだ。それも奈緒人を放置したままで。
その相手との再会は保健所の三ヶ月健診から帰り道でのできごとだった。麻季は奈緒人
を乗せたベビーカーを押して帰宅しようとしていた。途中の駅の段差でベビーカーを持て
余していた麻季に手を差し伸べて助けてくれた男の人がいた。お礼を言おうと彼の顔を見
たとき、二人はお互いに相手のことを思い出したそうだ。
彼は大学時代に麻季を殴った先輩だったのだ。麻季は最初先輩のことを警戒した。でも
先輩は何事もなかったように懐かしそうに麻季にあいさつした。当時近所にママ友もいな
いし僕も滅多に帰宅できない状況下で孤独だった麻季は、先輩に誘われるまま近くのファ
ミレスで昔話をした。サークルや学科の友人たちの消息を先輩はたくさん話してくれた。
当時の友人たちはそれぞれ自分の夢に向かって頑張っているようだった。中には夢を実
現した友人もいた。僕との結婚式で「麻季、きれい」と感嘆し羨望の眼差しをかけてくれ
た友人たちに対して当時の麻季は優越感を抱いていたのだけど、その友人たちは今では華
やかな世界で活躍し始めていた。国際コンクールでの入賞。国内どころか海外の伝統のあ
るオケに入団している友だちもいた。
それに比べて自分は旦那も滅多に帰宅しない家で一人で子育てをしている。麻季の世界
は奈緒人の周囲だけに限定されていた。
結婚式で感じた優越感は劣等感に変わった。麻季の複雑な感情に気づいてか気が付かな
いでか、先輩は自分のことも話し出した。国内では有名な地方オーケストラに入団した先
輩は、まだ新人ながら次の定期演奏会ではチェロのソリストとして指名されたそうだ。
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