過去ログ - ビッチ
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75:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/04(火) 22:26:33.71 ID:j6ezIR3ko

 僕は駅から自宅に歩きながら再び気持ちが落ち込んでいくのを感じた。

 兄友に言われたとおりナオが僕のことを好きなことは今となっては疑いようがない。
だからなんでナオのような子が僕のことなんか好きになったのだろうとうじうじと考え
ることは止めにしようと思っていた。

 でもピアノコンクールで一位とかっていう話を聞くとまた別な不安が沸いてきたのだ。

 今現在ナオは付き合い出したばかりの僕のことが好きかもしれない。でもあれだけ容
姿に恵まれていて、それだけではなくピアノの方もコンクールで受賞するレベルとなる
と、この先もナオが僕のことを好きでいてくれる保証は何もないのだ。

 ここまでくると世界が違うというほかはない。ナオからピアノのレッスンの話とか音
大志望のことは聞いてはいたけど、ここまで本格的に取り組んでいるとは考えもしなか
った。

 単なるお嬢様学校に通う生徒の嗜みくらいならともかく入賞レベルだとすると中高は
彼氏どころじゃないのが普通じゃないのか。僕はこの世界のことはよく知らないけど、
ここまで来るには相当厳しいレッスンに耐えてきたはずだった。

 それにその世界にだっていい男なんていっぱいいるかもしれない。僕ではピアノの話
には付き合えないけど、彼女と同じくこの世界を目指している男にだってナオの容姿は
好ましく映るだろう。そういう奴らと比較された時にナオは僕を選んでくれるのだろう
か。


 どう考えても将来は不安だらけだった。




 帰宅して自分の部屋に上がる前にリビングを覗くと、僕に気がついた妹がソファから
立ち上がった。

「おかえりなさい」

 妹は相変わらずいい妹路線を続けているようだった。髪が黒いままなのは当然として
化粧もしていないし異様に長かったまつげも普通になり爪も自然な桜色のままだ。

 こいつが昔からこうだったらあるいは僕は明日香に惚れていたかもしれない。一瞬そ
んなどうしようもないことを考え出すほど、前と違ってこいつの顔は少し幼い感じでそ
の印象は可愛らしい少女のそれだった。

「ただいま」

「今日もお父さんたち帰り遅いって」

「そう」

「お風呂沸いてるよ」

 僕は少し驚いた。風呂の水を入れ替えてスイッチを入れるのはいつも僕だった。妹は
僕の沸かした風呂に入るか、シャワーだけかいつもはそんな感じだったのだ。

「先に入っていいよ。ご飯用意できてるから」

 え? こいつが夕食を用意するなんて初めてのことじゃないのか。妹は僕の好みに合
わせて服装を変えるとは言ったけど生活習慣全般を見直すとは思わなかった。

「先に入っていいのか」

「何で聞き返すのよ。変なお兄ちゃん」

 妹は笑って言った。


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