751:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/20(木) 23:32:57.54 ID:tOg9VqEDo
回数の問題じゃない。確かに慣れない子育てに悩んでいる麻季を仕事にかまけて一人に
したのは僕だった。でも心はいつも麻季と奈緒人のもとを離れたことなんてなかった。
麻季だって寂しかったのだ。仕事中に頻繁に送られてくるメールだって今から思えば寂
しさからだったのだろう。でも僕はそこで気がついた。あれだけ頻繁に僕に送信されてい
たメールがあるときを境にその回数が減ったのだ。それは麻季が先輩と再会してメールで
やり取りを始めた頃と合致する。
「先輩って鈴木って言ったっけ」
「・・・・・・うん」
「鈴木先輩って独身?」
「うん。でも彼とはもう別れたんだよ。一度だけしかそういうことはしてないよ」
そのとき僕はもっと辛いことに気がついてしまった。麻季が先輩に抱かれた時期は、麻
季に拒否された僕がもう麻季に迫るのはやめようとしていた時期と同じだった。つまり麻
季は僕に対しては関係を拒否しながらも先輩に対しては体を開いていたことになる。
僕の中にどす黒い感情が満ちてきた。できることならこの場で暴れたかった。あのとき
鈴木先輩がしたように麻季の頬を平手で殴りたかった。
「先輩のこと好きなのか?」
「何でそんなこと言うの」
麻季は不安そうに僕を眺めて言った。
「僕は君のこと愛しているから。君が僕と離婚して先輩と一緒になりたいなら・・・・・・」
「違う!」
麻季がまた泣き出した。
「先輩は君たちの関係のことを何か言ってたんでしょ」
「それは」
「泣いてちゃわからないよ。ここまできて隠し事するなよ」
この頃になってだんだん僕の言葉も荒くなってきた。自分を律することが難しくなって
きていた。
「・・・・・・あの。あなたと別れて一緒になってくれって。奈緒人のこともきっと幸せにする
からって」
「そう」
本当に今日はこのあたりが限度だった。このまま話していると本当に麻季に手を上げか
ねない。奈緒人の名前が先輩の口から出たと言うだけで自分の息子が彼に汚されたような
気さえする。
「でも断ったよ、あたし。最初のときからすごく後悔したから。あの後先輩からメールが
いっぱい来たけど返事しないようにしたんだよ」
麻季は泣きながら震える手で自分の携帯を僕に見せようとした。
誰がそんなもの見るか。
「今日はもう寝よう。明日は休みだし明日また話そう」
僕は立ち上がった。僕の足に麻季がまとわりついた。
「お願い、許して。何でもするから。あたしあなたと別れたくない」
「・・・・・・今日はここで寝るよ。君は奈緒人の側にいてあげて」
絶望に満ちた表情で床に座り込んだ麻季が僕を見上げた。麻季の悲しい表情を見ること
が今まで僕にとって一番悲しく嫌なことだったはずのに、このときは僕は麻季の絶望に対
しても何も感じなくなってしまっていたようだった。
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