76:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/04(火) 22:28:49.56 ID:j6ezIR3ko
僕が風呂から上がってリビングに戻ると妹は相変わらずソファに座って何かを読みふ
けっていた。
「おい・・・・・・勝手に読むなよ」
それは風呂に入る前にうっかりカバンと一緒にリビングに放置してしまったナオのコ
ンクールのプリントだった。
「ああ、ごめんお兄ちゃん。片付けようとしたらお兄ちゃんの彼女が載ってたからつい」
僕は一瞬苛々したけどこれは放置しておいた僕の方が悪い。それにナオと付き合って
いることは妹にはばれているのだし、今さらコンクールのことなんか知られても別に不
都合はないだろう。
「コンクールで優勝とかお兄ちゃんの彼女ってすごいんだね」
妹が無邪気に言った。「そんな子をいきなり彼女にできちゃうなんてお兄ちゃんのこ
とをなめすぎてたか」
妹は笑った。嫉妬とか嫌がらせとかの感情抜きで妹がナオのことを話してくれるよう
になったことはありがたい。でもナオのことをすごいんだねと無邪気に言われると、改
めて僕のナオの恋人としての位置の危うさを指摘されているようで、少し気分が落ち込
んだ。
「ほら、これ返すよ。ご飯食べる?」
驚いた僕の様子に、帰宅して初めて妹は少し気を悪くしたようだった。
「さっきから何なの? 妹がお兄ちゃんにお風呂沸かしたり食事を用意するのがそんな
に不思議なの?」
「うん。不思議だ。だっておまえこれまでそんなこと全然しなかったじゃん。むしろ僕
の方が家事の手伝いはしてただろ」
僕は思わず本音を言ってしまった。
「ふふ。これからは違うから」
でも妹は怒り出しもせず微笑んだだけだった。
テーブルについて妹が用意してくれた簡単な夕食を二人きりで食べた。何か不思議な
感覚だったけど別にそれは不快な感じではなかった。
「そういえばさ」
機嫌は悪くなさそうだったけど妹がずっと沈黙していることに気まずくなった僕は気
になっていたことを尋ねた。
「何」
「おまえさ、僕の友だちと知り合いだったんだってな」
「え? お兄ちゃんの友だちって?」
「兄友と女さんっていうカップル。おまえの彼氏だったイケヤマとかというやつとおま
えと四人で遊んだことがあるっていってた」
「兄友さんが? お兄ちゃんの知り合いとかって言ってなかったけど」
「知らなかったみたい。この前偶然おまえの名前で気づいたみたいだな」
「ふ〜ん」
妹は関心がなさそうだった。
「お兄ちゃんが二人から何を聞いたのか知らないけど、それ全部過去のあたしだから」
「はい?」
「あたしはもう彼氏とも別れたし遊ぶのも止めたの・・・・・・それは今さらピアノを習うわ
けには行かないけど」
「おまえ、何言ってるの」
妹は立ち上がって僕の隣に腰掛けた。
「いい加減に気づけよ。あたしはあんたのことが、お兄ちゃんのことが好きだってアピ
ールしてるんじゃん」
僕が避けるより早く妹は僕に抱きついてキスした。
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