787:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 23:49:52.59 ID:AQ0OypmRo
玲菜は一月だけ待つと言った。別に僕が玲菜に義理立てする必要はない。
でも僕は玲菜の判断に自分を委ねようと考えた。合理的な思考ではないかもしれないけ
ど、あれだけ追い詰められている玲菜が鈴木先輩を許すなら、僕も麻季を許そう。でも麻
季が先輩と別れるなら僕も麻季との離婚をを考えよう。
悩んだ結果、ようやくそこまで僕は自分の思考を整理することができた。このときの僕
には正常な判断能力は失われていたのかもしれない。情けないけど僕は玲菜の判断に全て
を委ねる気になっていた。
「ご飯食べたの」
麻季が微笑んだまま聞いた。
「連絡しなくて悪い。食べてきちゃった」
実際は玲菜との会談で食欲を失っていた僕は何も食べていなかった。でも今麻季の用意
した食事を食べられるほど僕のメンタルは強くない。
「気にしないでいいよ。それよりそろそろ奈緒人を寝かせなきゃ」
「ああ。悪い」
僕の手から奈緒人を受け取った麻季は奈緒人を寝室に連れて行った。
こうして僕は自分の判断を保留して玲菜の審判を受け入れる道を選んだ。玲菜の言う一
月を待つ間、僕は麻季にできる限り優しくした。別に陰険な思いからではない。これが麻
季との生活の最後になるかもしれないのだ。浮気までされて情けないという気持ちもあっ
たけど、麻季と付き合って結婚した生活は彼女の不倫の発覚までは幸せだった。だから僕
は麻季と別れるにせよ、最後までその思い出を綺麗なままにしたかった。
麻季も僕に対して優しく接してくれた。彼女が本心で何を考えていたかまではわからな
い。でもこの奇妙なモラトリアムの間、僕たちは理想的な夫婦を演じたのだ。
僕は玲菜と会ったことを麻季には話さなかった。玲菜は僕に対して何も口止めしなかっ
た。でも彼女が何もせずに先輩の行動を見守っている以上、そして僕も玲菜の判断に追随
しようと考えたからには、麻季に玲菜のことを話すわけにはいかなかった。
それでもいろいろ考えることはあった。玲菜が鈴木先輩を許した場合でも僕は麻季と本
気でこの先やり直せるのか。そして玲菜が先輩を見限ったとしたら僕と麻季は離婚するこ
とになるのだろうか。先輩と麻季は結ばれるのか。その場合の奈緒人の親権はどうなるの
か。
それはいくら考えても現状では何の結論も出なかった。
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