81:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/05(水) 22:40:14.34 ID:8xw3Blz8o
「ピアノのレッスンなんです」
ナオは言った。
「こんなに早くから?」
僕は驚いた。僕にとっては土曜日の朝なんて十時ごろまで寝坊するのが普通だっただ
けに。
「毎週土曜日の午前中はお昼までレッスンなんです」
「大変なんだね」
僕はそう言ったけど同時にコンクールの入賞のことを思い出して、それなら無理はない
なと思った。
「好きでやっていることですから」
ナオはあっさりと答えた。
「それよりも偶然ですよね。ナオトさんはどこにお出かけなんですか。学校とは逆方向
ですよね」
僕にぴったりと寄り添うように座っているナオと会話を始めると、さっきまで悩んで
いた明日香の行為のことも忘れられるようだった。
妹と一緒に家にいたくないから目的もなく外出しているとはナオには言えない。
「いや、特に何でって訳じゃないよ。本とか探したくてぶらぶらと」
「本屋ならナオトさんの最寄り駅に大きなお店があるのに」
「たまにはあまり降りたことのない駅に降りてみたくてさ」
苦しい言い訳だったけどどういうわけかその言葉はナオの共感を呼んだようだった。
「ああ、何となくわかります。あたしもたまにそういう気分になるときがありますよ」
「そうなの」
「ナオトさんと初めて会った時ね、あの駅で初めて降りたんですよ。駅前の景色とかも
新鮮で何かいいことが起こりそうでドキドキしてました・・・・・・そしたら本当にいいことが
起こったんですけどね」
ナオは少しだけ顔を赤くして笑った。
「でも週末はナオトさんと会えないと思ってたから今日は得しちゃったな」
それは僕も同じだった。妹のことで胃が痛くなって自宅から逃げ出した僕だったけど
期せずしてナオに会えたことが嬉しかった。
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