837:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/14(月) 22:25:54.96 ID:4uQOXUyEo
僕は父さんの知り合いの弁護士に正式に妻側との依頼を依頼した。初老の人の良さそう
な人だった。彼は受任通知を見て僕を疑わしそうに見た。きっと不倫したクズのようなD
V男から妻からの慰謝料要求の減額でも依頼されたのだとと思ったのだろう。
最初から事情を話すと弁護士はようやく理解してくれたけど、彼が言うには証拠がない
ので客観的に立証し反論することは難しいそうだ。
「私は結城さんの代理人を引き受ける以上あなたが真実を話してくれている前提で交渉は
しますけど、多分それは先方の太田先生も同じでしょうね」
先方との予備的な交渉の中で離婚するということ自体はお互いに与件になっていたので、
そこで揉めることはなかった。また、お互いに慰謝料の要求も無かった。ただ、問題は二
つあった。
一つは離婚理由でもう一つは養育権だった。弁護士によれば実は互いに離婚で一致して
いて慰謝料の請求もない以上、離婚の理由はさして重要ではないそうだ。そんなところは
争わずに養育権の交渉に全力を注ぎましょうと僕は弁護士に言われた。そう言われればそ
んな気もしてきた。どちらが有責かが重要なのは離婚するしないや慰謝料の多寡に影響す
るからであって、そこが争点になっていない以上はもう気にしない方がいいのかもしれな
い。
先方の受任通知書の内容は巧妙に事実の一部を捉えてはいたけど、悪意によってその意
味を捻じ曲げたものだった。その内容はでたらめだった。でも僕がショックを受けたのは
その内容にではない。僕が傷付くのを承知しながらそれを自分の弁護士に語った麻季の心
の闇に僕は絶望したのだった。そして多分麻季がそういう行動に出た理由は弁護士間の交
渉で明らかになるようなことではないだろう。だから僕は自分の弁護士の言うとおり問題
を親権に集中しようと思った。
それは合理的な判断だった思うけど、どういうわけかそのとき同席していた唯が納得し
なかった。
「条件とかそういう問題じゃないでしょ。反論しなかったらこんなデタラメを認めたこと
になっちゃうじゃない」
「婚姻関係の破綻の原因がこちらにはないことを主張してもいいですけど、お互いに証拠
がない以上水掛け論になって終わりですよ」
「それでも主張するだけは主張した方がいいと思います。あの内容をこちらが認めたわけ
ではないですし、協議が決裂して調停や裁判に移行したら有責側かどうかは親権にも影響
するでしょ」
「まあ確かにその可能性は否定できませんね」
結局唯の主張するとおりに交渉することに決まった。
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