840:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/14(月) 22:34:07.08 ID:4uQOXUyEo
「本当に久し振りだね。何年ぶりかな」
僕の隣に座った理恵が少し興奮気味に言った。「少し痩せた?」
「さあ? どうだろ」
「それにしてもここで博人君と会うとは思わなかったよ」
僕は名刺入れから最近作り直したばかりの名刺を取り出して理恵に渡した。
「今はここにいるんだ。それで声がかかったみたいだけど、どうも場違いみたいだ」
「なんだそうだったの」
理恵が笑った。「でもそれで博人君に会えたんだね」
理恵は自分の名刺を僕にくれた。それは若者向けのポップ音楽の雑誌の編集部のものだ
った。
「・・・・・・なるほど」
「なるほどって何よ」
彼女が笑った。
「しかし君も同じ業界にいるとは思わなかったよ」
「本当に偶然だね。もっともあたしは博人君みたいな高尚な音楽雑誌にいるわけじゃない
けど」
「玲子ちゃん・・・・・・だっけ。妹さんも元気?」
「うん、元気よ。あいつには子育てを任せちゃってるし、借りばっか作ってるよ。玲子も
文句言ってる」
子育てを任せるって何だろう。麻季との親権争いが調停に移ったばかりだった僕はその
言葉に反応してしまった。理恵も指輪をしている以上結婚しているのだろうけど、彼女に
も子どもができたのだろうか。それにしてもこの世界は育児と両立できるような世界では
ない。
「育児って・・・・・・お子さんいるの?」
「うん。女の子だよ」
「そうか」
「博人君、麻季ちゃんは元気? 後輩の女の子に結婚式の写真見せてもらったよ。麻季ち
ゃんのウエディングドレス綺麗だったなあ」
「あのさ・・・・・・」
「お子さんもできたって聞いたけど」
「うん。子どもは元気だよ」
「うん? 麻季ちゃんは?」
「元気だと思うけど最近会ってないから」
「・・・・・・どういうこと?」
理恵はいぶかしげな表情を浮べた。
「実はさ。麻季とは離婚調停中なんだ」
理恵は驚いたようだった。
「・・・・・・何で」
彼女はそれまで浮べてた微笑みを消した。彼女は呆然としたように僕を見た。
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