過去ログ - ビッチ
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852:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/16(水) 23:18:52.57 ID:by+6rqHIo

 麻季は一瞬本当に驚いたように目を見はって僕を眺めた。麻季は凍りついたように動き
を止めたけど、その視線はやがて横に移動した。

「・・・・・・博人君」
 理恵が向かいから僕の肩に手を置いた。「大丈夫?」

 その様子は理恵に気がついたらしい麻季にも見られたはずだった。麻季は視線を自分の
横にいる男に移した。そして彼女はその男の肩に自分の顔を乗せて寄り添った。それは幸
せだった頃、よく彼女が僕に対してよくした仕草そのものだった。男が麻季の肩を抱き寄
せるようにして何か囁いている。

 麻季が僕への愛情を失ったことはこれまで何回も悩んで納得していたはずだけど、実際
に彼女が僕以外の男とスキンシップを取るのを見たのは初めてだった。こんなことで動揺
することはない。そもそも麻季は以前鈴木先輩に抱かれているのだから。そう思ったけど
実際に再会した麻季に無視され、しかも彼女が僕以外の男にしなだれかかっている様子を
見ると、僕はそんなに冷静ではいられなかった。

 ふと気がつくと理恵が向かいの席から僕の隣に席を移していた。

「麻季ちゃんめ。やってくれるよね」

「何が?」

「・・・・・・でもさ。こういう方が麻季ちゃんらしい」

 何が麻季らしいのか。混乱した僕が理恵に聞こうとした瞬間、理恵が僕の首に両手を回
した。

「理恵?」

「仕返ししちゃおう」

 そのまま長い間僕は理恵に口に唇を押し付けられていた。

 理恵がキスをやめても彼女の両腕は僕に巻きついたままだった。僕は麻季に目をやった。
そのときの麻季のことはその後もずっと忘れられなかった。彼女は隣にいる男に体を預け
ながら僕と理恵を見つめていたのだ。

 麻季の目から涙が流れ落ちた。いったい何でだ。そのことに何の意味があるのだろう。

「出ようよ」

 理恵が立ち上がって僕の手を握って僕を立たせた。

「うん・・・・・・」

 会計を済ませて混み合った居酒屋を出るとき僕は最後に麻季を眺めた。もう麻季は僕た
ちの方を気にせず、男と何か賑やかに話し始めていた。

 先に店の外に出ていた理恵を追って外に出ると、彼女は携帯で電話していた。理恵の声
が途切れ途切れに聞こえてきた。

「うん・・・・・・悪いけど明日香のことお願い。多分今日は帰れないと思うから」

 理恵が携帯をしまった。

「今日は遅くなっても平気だから」

「何言ってるの?」

「麻季ちゃんのこと忘れさせてあげるよ」

 理恵が真剣な表情で戸惑っている僕に言った。


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