861:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/19(土) 23:50:37.26 ID:dspmsilGo
「あたしさ、大学時代に一度麻季ちゃんに負けたじゃん?」
居酒屋から移動した先はホテルの高層階の静かなバーだった。理恵の行きつけの店のよ
うだけど彼女が言っていたように夜景は素晴らしい。窓際に並ぶように置かれたカウチに
僕は理恵と並んで座った。
「・・・・・・別に勝ちとか負けとかじゃないでしょ」
「負けだよ。大学時代、もうちょっとってとこで博人君を麻季ちゃんに持ってかれちゃっ
たしね。あのとき、あたし結構悔しかったんだよ。しかもそのまま博人君たち同棲し出し
て結婚までしちゃうしさ」
「あのさ」
「何?」
「大学で再会したときさ、理恵って僕のこと好きだったの」
普段の僕ならこんなことをストレートに女性に聞くなんて考えられない。でも、さっき
の理恵のキスの後ならこういうことを口に出すことも何となくハードルが低かった。
「そうだよ」
理恵が物憂げに髪をかき上げながらあっさりと言った。
「でもさ・・・・・・僕と麻季が付き合い出したとき、君はその・・・・・・すぐに僕に近づかなくな
ったしさ」
「あたし、博人君に捨てないでって泣いて縋りつかなければいけなかったの?」
「そう言うことじゃなくて」
「それにあたし、あのときは博人君に告白だってされなかったし。不戦敗っていうところ
だったのかな」
「いや、あのときはさ」
「まあ、あたしもプライドだけは高かったからね。何があったか知らないけど博人君と麻
季ちゃんっていつのまにかキャンパスで一緒に過ごすようになっちゃうしさ」
「まあそうだけど」
「でしょ? あのとき君に泣きついてたらみっともない女の典型じゃない。あたしにだっ
て見栄はあるのよ。まして博人君と幼馴染っていうアドバンテージがありながら負けちゃ
ったんだしさ」
あの頃の僕はいろいろな意味で麻季にかかりきりだった。何を考えているのか今いちわ
からない彼女に不用意に惹かれてしまった僕は、自分の彼女に対する気持を整理するだけ
でも精一杯だったのだ。麻季に対する気持は彼女と同棲する頃にはほぼ落ち着いていたの
だけど、そこに至るまでの僕には正直に言って理恵の気持なんて考える余裕はなかった。
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