過去ログ - ビッチ
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862:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/19(土) 23:54:02.45 ID:dspmsilGo

 それにしてもこの店に移ってからの理恵は昔話、しかも麻季絡みの話ばっかりだ。



『麻季ちゃんのこと忘れさせてあげるよ』



 さっきの話はいったいどうなったんだ。別に期待して付いて来たわけじゃないし、理恵
との昔話が嫌なわけじゃないけど、これでは麻季を忘れるどころかますます思い出してし
まう。そして今一番考えたくないのがついさっき見かけた麻季の涙だった。親権を争って
いる子どもたちに対してはともかく、麻季はもう僕に対しては何の想いも残していないは
ずなのに。

「いろいろ悪かったよ」

「・・・・・・・謝らないでよ。博人君に謝られたらあたし、まるで情けない片想い女みたいじ
ゃない」

「そういう意味じゃないよ」

「冗談だよ。あたしもすぐに彼氏できたし」

「彼氏って、亡くなった旦那さん?」

「そうだよ。博人君の結婚より何年かあとに彼と結婚したの。あたしの一人娘の父親」

 これまで強気な発言を繰り返していた理恵が泣きそうな表情を見せた。理恵のご主人は
突然の死をとげたそうだ。浮気され不倫された挙句、麻季に捨てられた僕とはまた違った
悲しみが理恵にもあるのだろう。

 僕は玲菜の死を知ったときの感情を思い起こした。あのときはその衝撃と悲しみによっ
て、一時期は麻季に裏切られたことなどどうでもいいと思えるほど自暴自棄になったのだ。
なので愛し合っていた人を突然理不尽に喪失した痛みは理解できた。

「理恵が結婚してたって、こないだまで知らなかったよ」

「・・・・・・どうせ、あたしのことなんか思い出しもしなかったんでしょ」

「そうじゃないけど」

「唯ちゃんから聞くまではあたしのことなんか忘れていたくせに」

「だから違うって。昨日、君が指輪してるのを見てさ。それで」

「それで? 指輪を見たからどうだっていうのよ?」

 理恵は少し酔っている様子だった。

「どうって・・・・・・。唯に話を聞く前だったから君もご主人がいるんだろうなって」

「昨日の夜、唯ちゃんからあたしの旦那が亡くなったことを聞いたの?」

「うん」

「そう・・・・・・唯ちゃんって絶対ブラコンだよね。いつも君のことばっかり話しているもの
ね」

 酔っているせいか理恵の話がおかしな方向に逸れた。

「そんなわけあるか」

「あるよ。唯ちゃんって彼氏いるのに彼氏の話じゃなくて博人君の話しかしないのよ。知
らなかったでしょ? それも博人君が麻季ちゃんと普通に夫婦している時からそうだった
んだよ」

 だんだん話が逸れて行ったけど、少なくとも麻季の話をしているよりはよかった。昔の麻
季の気持なんか考えたって前向きな意味はないし、今の麻季の気持を慮っても離婚が覆
ったり親権が手に入るわけでもないのだ。


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