875:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/25(金) 23:22:42.28 ID:7rNmoFO0o
実際にそうとしか考えられなかったから僕はそう理恵に言った。いっそ麻季の口から鈴
木先輩と暮らしたいのと正直に言われた方がよかった。彼女がはっきりとそう言ってくれ
たら僕は麻季の要求どおりに彼女を自由にしたと思う。それなのに麻季は正直に告白する
のではなく、僕のことを誹謗中傷することを選んだのだ。
「それは違うと思うけどな」
「何で?」
「だって・・・・・・。さっき麻季ちゃん、あたしとキスしている博人君を見て泣いてたじゃん。
あたしと博人君が一緒にいるのを見て、男に寄り添うみたいな様子をあなたに見せ付けて
たしさ」
確かに僕より鈴木先輩を選んだとしたらあそこで麻季が泣く理由はない。
「それにさ。せっかく復縁した博人君のことなんかどうでもいいほど鈴木先輩が好きなら、
鈴木先輩以外の男と二人きりで飲みに来たりしないんじゃない?」
それもそのとおりかもしれない。麻季の涙に混乱してあまり気にしていなかったけど、
麻季が寄り添っていた男は鈴木先輩ではなかった。
「理恵ちゃんさ」
「なあに」
理恵も少し酔っている様だった。不覚にも僕はそういう理恵を可愛いと思った。
「麻季は僕より先輩を選んだんじゃなくて、僕と玲菜さんの仲に嫉妬したからこんなこと
をしでかしたって思っているの?」
「多分ね。それにしても受任通知の内容とか理解できない点はあるけどさ」
「そうだよな」
「まあ、いいや。玲菜さんって本当にいい子だったんだね。麻季ちゃんなんかの親友には
もったいないね」
それには何て答えていいのかわからなかった。僕は黙ったままだった。そしてこんなに
シリアスな話をしているというのに、理恵は僕に寄り添っているし僕は理恵の肩を抱いて
いる。
「ごめんね。麻季ちゃんのこと忘れさせるどころかかえって思い出させちゃって」
「いや。僕は別に」
「じゃあ、これから忘れさせてあげるよ。この店お勘定しておいてくれる?」
翌日は平日でお互いに仕事があった。僕は二日連続で同じ服装でも別に気にならなかっ
た。もともとそういう業界だったから。でも理恵はそうも行かないと言った。校了間際で
もないのに同じ服で出社なんて何と噂されるかわからないそうだ。
それで、僕は日付も変わったくらいの時間にラブホを出て、理恵を自宅近くまでタク
シーで送って行った。
「本当なら大学時代に博人君とこうなれていたのにね」
理恵がタクシーの後部座席で僕に寄りかかりながら呟いた。
「そうだね」
僕は少しだけ理恵の肩を抱く手に力を込めた。それに気づいたのか理恵が微笑んだ。
「初めては君とがよかったな」
酒に酔っていたせいか、さっきの余韻がまだ残っていたせいか、理恵はタクシーの運転
手のことを気にする様子もなくそう言った。
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