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897:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/29(火) 23:22:00.56 ID:HhhlN1+2o

 僕は今まで奈緒人が奈緒のことを守ろうとしているのだと思っていた。それは間違いの
ない事実だったとは今でも思っているけど、改めて二人をよく眺めると意外と奈緒が奈緒
人の面倒をみるような仕草を見せていることに気がついた。奈緒人が食べ物をこぼしたり
服を汚したりするたびに、奈緒はいそいそと奈緒人が落としたものを片付けたり奈緒人の
服をティッシュで拭いたりしていた。

 僕はそんな奈緒の様子に初めて気がついたのだ。仕事のせいで子どもたちのことをじっ
くりと見てあげられなかったせいか、こういう奈緒の様子には今まで気が付きもしなかっ
た。

 そのことを唯に話すと「今さら何言ってるの」と呆れられた。

「前に奈緒人が奈緒の面倒をよくみてくれるって言ってたじゃん?」

「うん、そうだよ。あたしもこんなんじゃなくて奈緒人みたいな兄貴が欲しかったよ」

「いや、それはどうでもいいけど、何か僕が見るにどっちかっていうと奈緒の方が奈緒人
の面倒をみているように見えるんだけど」

「そんなの前からそうじゃん。確かに奈緒人は奈緒を気にしているけど、奈緒だって奈緒
人に甘えているばかりじゃないんだよ」

「・・・・・・今まで気がつかなかった」

「まあ、お兄ちゃんが気にしなくてもいいよ。あたしみたいに毎日この子たちを見ていら
れたわけじゃないんだしさ」

「こんなことにも気がついていなかったんだな。少しだけ自己嫌悪を感じるよ」

「女の子の方がしっかりするの早いしね。妹の奈緒が兄の奈緒人の日常の面倒をみるなん
て微笑ましいじゃん」

「まあ、そうかな」

「まるであたしとお兄ちゃんみたいじゃん。しっかり者の妹が兄貴の面倒をみるとか」

 僕が新たに気がついた子どもたちのこういう様子は、唯にっとっては単に微笑ましい成
長のしるしに過ぎないようだったけど、こういう二人の様子を僕不在の家庭で麻季がどう
いう気持で眺めながら子育てをしていたのかを僕はここにきて初めて考えてみた。

 そうして考えるようになると先日の理恵の話が頭に浮かんだ。



『麻季ちゃんが玲菜さんと君のことで悩んでいたとしたらさ。きっと奈緒ちゃんを見るた
びにつらい思いをしていたのかもしれないね』



 僕は想像してみた。奈緒が玲菜にそっくりなことは麻季も気がついていたかもしれない。
そして奈緒人の方は僕に似ている。そんな奈緒人と玲菜似の奈緒が日増しに仲良くなって
いくところを、麻季は育児しながら一番身近なところで眺めていたのだろう。

 今まで考えたことはなかったけど・・・・・・もしも、本当にもしもだけど麻季が奈緒人に僕
の姿を見つつ奈緒に玲菜の面影を見ていたとしたら、麻季はその二人の姿を見て何を思っ
たのだろう。

 こんな幼い子どもたちに重ね合わせていいことじゃない。だけど麻季が本当に僕と玲菜
との仲を気にしていたとしたら、それは麻季にとってはまるで悪夢そのものだったかもし
れない。幼い二人が仲良くなる姿を見て、本来微笑ましいはずのその様子に麻季が僕と玲
菜が親しくなっていく姿を重ねてしまっていたとしたら、どれほどの心の闇が麻季に訪れ
ただろう。理恵の言葉をきっかけにして僕はそのことにようやく気がついたのだ。

 せめて僕が家庭にいれば麻季のストレスは僕の方向に向いていただろうし、僕も麻季を
諌めたり慰めたり、場合によっては喧嘩だってして彼女のストレスを発散させてあげるこ
とだってできたのかもしれない。でもこのとき僕は海外にいた。


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