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902:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/29(火) 23:25:44.96 ID:HhhlN1+2o

 調停の日は両親は病院へ行くことになっていた。そして間の悪いことに唯はその日、内
定していた企業の招集日だった。つまり実家には奈緒人と奈緒の面倒をみる人間がいなか
ったのだ。

「明日は病気になる。高熱があることにする」

「だめだよ。社会人になる最初のステップからおまえをさぼらせるわけにはいかないよ」

「じゃあ、もう内定辞退するよ」

「だから駄目だって」

 そんなことを唯とやりあっていたとき、理恵が事情を知って電話してきてくれた。

『奈緒人君と奈緒ちゃんも連れて来ればいいじゃん。家裁の隣の公園で遊ばせておけ
ば?』

「子どもたちだけで?」

『明日はあたしもついて行くから』

「仕事もあるだろうしいいよ」

『明日は代休だよ。あたしも一度くらい調停っていうの経験してみたいし』

「・・・・・・それじゃ奈緒人たちはどうなるの」

『奈緒人君なら奈緒ちゃんの面倒くらいみられるよ。唯ちゃんもそう言ってたし。あたし
も玲子に頼んで明日香を連れて行くからさ。何かあったら玲子が奈緒人君たちの面倒みて
くれるよ』

「玲子ちゃんと明日香ちゃんって、奈緒人と奈緒と会ったことすらないじゃん」

『心配いらないって。それとなく気にするように玲子に言っておくから』



 そういうわけでその日の調停の場には関係者として理恵が同席した。その場では顔を合
わせなかったけど、調停委員の話では麻季の方も鈴木先輩を連れてきたということだった。

 結局唯の言うとおり、奈緒人と奈緒を別々に育てるなんて考えられないことを主張して、
この日の調停は終った。僕と理恵が連れ立って家裁のそばの公園を歩いて行くと、ジュー
スやアイスクリームを販売しているワゴンのところに、玲子ちゃんが三人の子どもたちと
一緒に休んでいることに気が付いた。

「あら、結局一緒にいたんだ」
 理恵が微笑んで玲子ちゃんに話しかけた。玲子ちゃんは初対面のはずの奈緒人と奈緒に
気がついてくれたらしく、明日香ちゃんと一まとめにして面倒をみてくれたらしかった。

「玲子さん、奈緒人たちの面倒までみてもらってすいませんでした」

 僕は玲子ちゃんに礼を言った。

「どういたしまして。結城さんにそっくりだから奈緒人君のことはすぐにわかりました」
 玲子ちゃんが微笑んだ。「奈緒人君、しっかりしているから余計なお世話かと思ったん
ですけど、奈緒ちゃんと明日香がいつの間にか一緒に遊び出してたんで」

「本当にありがとう」

「いいですよ。一人も三人も一緒だし。まとめて面倒みてただけで」

 玲子ちゃんがどういうわけか顔を赤くした。

「玲子おばさんにソフトクリーム買ってもらった」

 奈緒人が言った。

「おばさんって、奈緒人。お姉さんと言いなさい」

「パパ」

 突然、奈緒が奈緒人から離れて僕に抱きついてきた。僕は暗い気持ちを隠して奈緒を抱
き上げた。抱き上げられた奈緒は無邪気に喜んで笑っていた。


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