915:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/03(日) 00:09:14.64 ID:gNbKbyMjo
「元気そうね、博人君」
以前によく僕に見せてくれた優しい微笑みを浮べて麻季が言った。ちょっと長い出張か
ら戻ったとき、麻季は僕に今と全く同じ微笑みを浮べてそう言ってくれたものだった。
「偶然だね」
ようやく僕は掠れた声で答えることができた。
「偶然というわけじゃないの・・・・・・。あなたが会社から出てくるのを待ってた」
麻季の微笑みに不覚にも少しだけ動揺する自分のことが、僕は心底嫌だった。
「・・・・・・お互いに弁護士を通してしか接触しないことになっていなかったっけ」
僕はようやく気を取り戻してそう言うことができた。麻季と直接二人きりになることは
もうないものだと思ってはいたけど、先日の居酒屋での偶然もある。理恵に結婚を申し込
んでからは、万一再び麻季と会うことになったらそう言おうと僕は心に決めていた。
そしてどうやら僕は動揺しながらも思っていたとおりのセリフを口に出すことができた
のだ。
「それはそうなんだけど・・・・・・」
麻季は俯いてしまった。
「何か用事でもあるの」
僕は意識して冷たい声を出すように努めた。麻季は黙ったままだった。
「これから実家に帰らなきゃいけないんで、用事がないならこれで失礼する」
用事があったとしても僕は黙ってここから立ち去るべきだ。
「待って。あなたと話したいの」
「・・・・・・話なら弁護士を通してくれるかな」
「・・・・・・博人君と直接お話したいと思って」
「あのさ」
僕は段々と腹が立ってきた。「弁護士を通せって言い出したのは君の方だろう。携帯だ
って着信拒否してるくせに今さら何言ってるんだ」
「してない」
「え」
「着拒してたけどすぐに後悔してとっくに解除してあるの。でも博人君連絡してくれない
し」
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