過去ログ - ビッチ
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916:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/03(日) 00:10:58.46 ID:gNbKbyMjo

「あれ? 編集長まだいたんすか」

 部下の一人がそのとき編集部から出てきて僕に話しかけた。彼はすぐに麻季に気がつい
た。悪いことに彼は麻季とも顔見知りだった。

「あれ、麻季さん。ご無沙汰してます。お元気でしたか」

「・・・・・・お久しぶりです」

 麻季が小さな声で言った。

「何だ。結城さん、今日は奥さんと待ち合わせでしたか。相変わらず仲がいいですね」

 社内では上司以外は僕と麻季の仲が破綻していることを知らない。

「そんなんじゃないよ」

「麻季さん相変わらずおきれいで。それにお元気そうですね」

「・・・・・・はい」

 彼は腕時計を眺めた。

「おっといけね。マエストロをお待たせしたらご機嫌を損ねちゃう。じゃあ、俺はこれで
失礼します」

「先生によろしくな」

「わかりました」

 彼は麻季に向ってお辞儀をして足早に去って行った。

 どうもこのままでは埒があかない。それにいつまでも編集部の前で人目に晒されている
わけにもいかなかった。

「しようがない。とにかくここから移動しよう」

 僕は麻季に言った。

「うん。ごめん」

「来るなら来るって連絡してくれればいいだろ。いきなり待ち伏せとか何考えてるんだ
よ」

「ごめんなさい」

 麻季が泣き出した。彼女が何を企んでいるのかはしらないけど、社の前で泣かれると困
る。僕は仕方なく彼女の手・・・・・・ではなく、上着の袖を遠慮がちに掴んで歩き出した。麻
季は大人しく僕の後を付いて来た。

 クローバーへ行こうと思ったのだけど、馴染みのその喫茶店はこの時間では既に閉店し
ていた。それによく考えるとあそこは生前の玲菜と最後に会った場所だし、理恵にプロ
ポーズした場所でもある。あそこに麻季を連れて行く訳には行かなかった。この辺にはフ
ァミレスもない。


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