919:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/03(日) 00:14:03.05 ID:gNbKbyMjo
「博人君。食べ物の好み、海外から帰っても変わってないよね?」
「・・・・・何言ってるの」
「本当は身体には悪いんだけど・・・・・・でも好きなものを食べた方がいいよね」
麻季が店員を呼んで食べ物を注文した。それは完璧なまでに僕の好みのものだった。こ
れだけを取ってみれば、理恵や唯よりも僕の食生活の嗜好を理解していたのは麻季だった。
でもそれは当然だ。破綻したにしても何年にも渡って麻季と僕は夫婦だったのだから。
それにしても麻季は何でわざわざ僕に会いに来たのだろう。いろいろ店内に入ってから
はいろいろと喋りだしてはいるけれど、彼女が今になって何のために僕の前に姿を見せた
のかについてはヒントすら喋らない。
「お酒、注いでもらってもいい?」
さっき麻季に酒を注いだときに僕は冷酒の瓶を自分の手前に置いてしまっていた。僕は
再び麻季のグラスに冷酒を満たし、今度は麻季の手前にその瓶を置いた。
麻季は一口だけグラスに口をつけてテーブルに置いた。
「ビールでいい?」
「え」
僕はいつの間にか生ビールのジョッキを空にしてしまっていたようだ。
「頼んであげる」
「あのさあ。明日も仕事だしゆっくり酒を飲んでる時間はないんだ」
「でもお料理もまだ来てないよ」
「君が勝手に頼んだんだろうが」
「今日って実家に帰るだけでしょ? まだ終電まで三時間以上あるじゃない」
「そういう問題じゃない。第一に早く帰って子どもたちの顔を見たい。第二に君と二人き
りで一緒にいたくない・・・・・・。おい、よせよ。何で泣くんだよ」
泣きたいのはこっちの方だ。僕は泣き出した麻季を見ながらそう思った。
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