過去ログ - ビッチ
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951:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/11(月) 00:23:36.12 ID:ER1rVJ59o

 その日は初めて教室を訪れた親子の相手をするところから麻季の仕事は始まった。きち
んとした紹介で入ってくる人だったから、あまり問題はないはずだった。

 約束の時間にまだ幼い女の子を連れて教室に来た母親を見たとき、麻季はどこかで見覚
えのある人だなと思っただけだった。でも相手は興奮したようにいきなり彼女に話しかけ
てきたのだった。

「夏目ちゃんじゃない。久し振り」

 そう言われてよく見ると彼女は同じサークルにいた一年上の先輩だった。あまり女性の
知り合いがいなかった麻季だけど、ようやく彼女のことを思い出した。彼女は大学時代の
新歓コンパのときに博人と二人でずっと話をしていた先輩だったのだ。

「多田先輩ですよね? ご無沙汰してます」

「やだ、夏目ちゃんって佐々木先生のとこで働いてたんだ。知っていればもっと早く連絡
できなのに。あたしは今は結婚して川田っていう姓なんだけどね」

 だから今まで気がつかなかったのか。麻季は記憶を探ってみた。たしかこの先輩はどっ
かの私立中学の音楽の教師になったはずだ。

「そうそう。まだちゃんと働いているんだけどさ。中学生って面倒でね。音大じゃなくて
教育大の音楽科行っとけばよかったよ。あたしって教育とかって全然苦手だしさ」

「こちらはお嬢さんですか」

「そうなの。小学校の低学年なんだけど早い方がいいと思ってさ。麻季が指導してくれる
の?」

 そういえばこの先輩自身も佐々木先生の愛弟子だったはずだ。

「ちょっと待ってくださいね」

 ロビーの椅子を勧めてから麻季は佐々木先生の私室に赴いた。

 ノックして部屋に入ると先生はデスクの上に広げた書き込みだらけのスコアから顔を上
げた。

「どうしたの?」

「先生、あたしより一期上の多田さんって覚えています?」

「ああ真紀子さんでしょ。どっかで学校の先生してるんじゃなかったっけ」

「そうなんですけど、今日申込みにいらした川田さんって、旧姓多田さん、多田真紀子さ
んでした」

「あら、じゃあ川田美希ちゃんって多田さんのお子さんなんだ」

「はい。どうされます? あたしがレッスンしましょうか」

「あの多田さんのお嬢さんなら最初くらいはあたしがみるわ。三番のレッスン室に連れて
来て」


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