954:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/11(月) 00:26:16.38 ID:ER1rVJ59o
怜菜は本当は博人ではなく鈴木先輩のことが好きだったのだろうか。それなら麻季が博
人と付き合ったときもうろたえずに受け止めてくれた理由としては理解できる。そして結
果的に麻季に振られることになる鈴木先輩のことを気にしていたのも理解できる。
でも麻季が博人と付き合いだす前に彼と自分が話をしていたところを聞いていた怜菜の
様子を思い出すと、やはり彼女は博人のことを好きだったのではないかと思える。
怜菜は麻季への友情から、自分の気持を抑圧してまで麻季と博人との付き合いや結婚を
祝福してくれたのだ。それは間違いないはずだった。それならなぜ彼女は鈴木先輩と結婚
したのだろう。それも親友であった自分には一言も知らせずに、披露宴に招待すらするこ
ともなく。
『怜菜は敵だからね』
凄く久し振りに麻季の心の中で誰かの声がした。
『怜菜が鈴木先輩と結婚した理由はわからない。それでも彼女は麻季と博人との付き合い
を邪魔しようと企んでいるんだよ』
その声を聞くのは久し振りだった。そしてできればもう二度と聞きたくない声だった。
濁ったような男とも女ともつかないような低い声。
麻季が博人と付き合い出してからも彼女の人生の節目でしょっちゅう心の中で勝手にア
ドバイスし出す声。
博人と同棲したのもその声の勧めだった。佐々木先生の教室を手伝うことに決めたのも
その声に従ったまでだ。でも博人のプロポーズに答えたのはその声とは関わりなく純粋に
自分の意思だった。そしてその声は博人との結婚後は彼女の頭の中で響きだすことはなく
なっていたのだった。
『怜菜は敵だ。これは罠だよ。怜菜は君のことを恨んでいるんだね』
「あ、佐々木先生。ご無沙汰しています」
先輩が立ち上がってレッスン室から美希を伴って出てきた先生に声をかけた。
「多田さんお久し振り。元気だった?」
「おかげさまで元気です。それで美希はどうでしょうか」
「うん。まだわかんなけど、弾き方の癖とかあんたにそっくりだわ。しばらく結城さんに
レッスンさせるけどいい?」
「はい。ありがとうございます」
先輩が感激したように声を出した。「麻季ちゃん、娘をよろしくね」
「結城さん?」
黙っている彼女を不審に思った先生が麻季に声をかけた。
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