96:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/06(木) 22:20:13.41 ID:04B86Ztno
相変わらず空模様はどんよりとした曇り空だったけど、その頃になると駅の西口もか
なりに人出で賑わいを増していた。そう言えばもうすぐクリスマスだ。
目当てのファミレスで席に着くまで十五分くらい待たされたけど、その頃になると再
び僕は気軽な気分になっていたせいで、ナオと話をしているだけで席に案内されるまで
の時間が長いとは少しも思わずにすんだ。
「ご馳走するから好きなもの頼んでよ」
僕は余計な念を押した。兄友とかならこんな余計なことは言わないのだろう。一瞬僕
は余計なことを言ったかなと後悔したけど、でもナオは素直にお礼を言っただけだった。
とりあえず料理が来るまで僕は自分が待っている間にこの駅前を探索したこと、不思
議なことに初めて来たはずのこの街で少しも迷わなかったことを話した。
「う〜ん。あたしと一緒に教室までの道を歩いた記憶があるというだけなら、前世の記
憶だって主張したいところですけど」
ナオが少し残念そうに言った。「ナオトさん一人でもこの辺の地理に明るかったとし
たら、ナオトさんは昔この街に来たことがあるんでしょうね。忘れているだけで」
「何で残念そうなの」
僕は思わず笑ってしまった。
「だって、前世でも恋人同士だったあたしたちの記憶が残っていると思った方がロマン
ティックじゃないですか」
「まあそれはそうだ」
「まあ、でも。よく思い出したら昔何かの用でここに来たことがあるんじゃないですか」
ナオは言った。
「さあ。記憶力はよくない方だからなあ。全然思い出せない。逆に言うとここに来たの
が初めてだと言い切るほどの自信もない」
「それじゃわからないですね」
ナオは笑った。その時注文した料理が運ばれてきた。
食事をしながらナオと他愛ない話を続けていたのだけど、だんだん僕はあの男が気に
なって仕方なくなってきた。変な劣等感とか嫉妬とかはもうやめようと思ったのだけ
ど、これだけはどうしても聞いておきたかった。
「あの・・・・・・気を悪くしないでくれるかな」
ナオがパスタの皿から顔を上げた。
「何ですか」
「さっきの―――さっき君の肩に手を置いた男がいたでしょ? 随分馴れ馴れしいとい
うか、結構親しそうだったんだけど彼はナオちゃんの友だちなの?」
ナオはまた不機嫌になるかなと僕は覚悟した。でも彼女はにっこりと笑った。
「嫉妬してくれてるんですか?」
その言葉とナオの笑顔を見ただけで既に半ば僕は安心することができたのだ。
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