985:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/13(水) 23:00:59.39 ID:kDGj/IPLo
『もったいぶらないで早く言って』
『麻季ちゃんって太田怜菜さんと知り合いだったよね』
何が太田怜菜さんだ。あんたは独身だってあたしには言っているけど、彼女はあんたの
奥さんじゃない。正確に言うと鈴木怜菜でしょ。そう麻季は思ったけど今さら先輩の嘘を
責める気はなかった。今はとにかく早くこの電話を切りたい。急がないと博人君が帰って
きてしまう。
『偶然に知ったんだけど・・・・・・。君の旦那と怜菜さんって浮気しているみたいだぜ』
一瞬、麻季の周囲の世界が停止した。
『もしもし?』
『ふざけないでよ! いったい何の根拠があって』
『いや。偶然に喫茶店で結城と怜菜さんが二人きりで親密そうに話をしているところを見
ちゃったんだ』
場所は博人の編集部の近くにあるクローバーという喫茶店。その店の名前には聞き覚え
があった。打ち合わせでよく使う店だと博人君が話してくれたことがある。先輩はそこで
親密そうに顔を近づけて、何やらひそひそと密談めいた様子で話をしている博人と怜菜を
見かけたのだという。
『僕も二人に見つかったらまずいと思ってすぐに店を出たんで、その後二人がどうしたか
はわからない。ひょっとしたらホテルにでも』
先輩も動揺している様子だった。自分の妻が後輩と密会しているところを発見したのだ
とすると無理はない。麻季には独身だと偽っているけど、怜菜は間違いなく先輩の妻なの
だから。先輩は乱れた声で何か続けていたけど、もう麻季にはその声は届かなかった。
『やられたな。だから言ったじゃない。怜菜は麻季の敵だって』
『まだ博人君の浮気だって決まったわけじゃないでしょ!』
『先輩は嘘は言っていないと思う。怜菜に浮気されて動揺しているみたいだし。大方自分
のことは棚に上げて怜菜を疑って尾行でもしたんじゃないかな』
『・・・・・・待って。クローバーは同業者の人たちがいつも打ち合わせで使っている喫茶店だ
って博人君は言ってた。そんなとこで密会なんかしないでしょ』
麻季は必死だった。心の声にもそれに同意して欲しかったのだ。
『かえってばれない場所だと思ったのかもよ。怜菜も博人も音楽関係の仕事をしているじ
ゃない? 誰かに見られたって打ち合わせだと言い訳すれば誰も疑わないだろうし』
『やだ・・・・・・そんなのやだよ』
『落ちつきなよ。まだ君は負けた訳じゃない。先輩は女にだらしないくせに怜菜に関して
は自分への貞操を要求するようなクズだからさ。きっと前から怜菜のことは気にしていた
と思うんだ。だけどこれまではそんな様子はなかったみたいだし、怜菜と博人が二人きり
で会ったのはこれが最初だと思うよ』
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