6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)[saga]
2012/08/29(水) 23:53:08.83 ID:x68eWxlN0
トーストの最後のひとかけらを噛み砕いて、冷蔵庫からパックのコーヒーを取り出して、コップに注ぐ。
思えばこの家に越してきて今年で三年目。備え付けられていた小さな冷蔵庫は、この三年の間にかなり痛んでいた。
テレビだって元々あったもので、だいぶ古い型だ。おまけに冷蔵庫と負けず劣らず小さい。私たち姉妹の部屋は別々にあるものの、お風呂や洗面所だって狭い。
よくもまあ、こんな古いアパートの一室で満足できたものだと自分を褒めてやりたくなるほどに。
もともと私立の小中高一貫の学校に通っていた私たちは、母親が亡くなってからはその学校が所有する寮に身を寄せていた。けれど姉が高校に進学すると同時に、この部屋へと移り住んだのだった。姉の成績は優秀で、このまま高校に入学すれば奨学金をもらえることになったのだ。
また、親が遺した貯金や保健、学校からの援助、そしてなによりお姉ちゃんが「これ以上姉妹揃って迷惑をかけるわけにはいかない」から寮を出たいと申し出た結果だった。
本当は、お姉ちゃんは一人暮らしをしたかったのだと思う。
まだ中学生だった私を寮に置いて、出て行きたかったのだと思う。
けれど学校は、「姉妹での二人暮らし」を条件にした。だから私もあそこを出て、今ここにいる。
私が内部進学を選ばずに外部受験を選んだのは、お姉ちゃんと違う学校に行きたかったからだけでなくて、自分が奨学金をもらえるような器でないこともわかっていたからだ。
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