314: ◆WNrWKtkPz.[saga]
2012/10/21(日) 23:53:25.22 ID:fxGEJ0Ly0
「……御剣さん、どうなんですか?」
「……え?」
僕は黙っている御剣に聞いてみた。
「気づいているかもしれませんが、葉月さんはあなたを裏切って僕のほうへ来ようとしている……。これについて、どうなんですか?」
公然の裏切りという行為と言うのは、現実ではなかなかに見られない光景だろう。
普通ならば驚きや怒りを見せて、その人を非難すると思うのだが……。
「……しょうがないんじゃないかな」
「どうして?」
「それは……葉月さんにとって俺は、一緒に行動すべき人ではない、と判断したからだと思う」
御剣は、ポツリポツリとそんな言葉を口から漏らしていく。
「み、御剣君……」
取り乱していた葉月が、ようやく自分のしようとしていた非道な行為に気が付く――
「本当に、そうなんでしょうか?」
「え……?」
「僕は、人は自分の価値観でしか物事を判断しないって言いましたよね?」
「だから、葉月さんは俺が頼りないって判断して……」
「いえ、それは違います。葉月さんは御剣さんの事を頼りないだなんて思っていませんよ」
「それは、どういう……」
「葉月さんは、単に僕の言葉に自分自身の価値観を洗脳されただけなんです。そうですよね、葉月さん?」
「それは……わ、分からない」
「じゃあ、どうして葉月さんはいままでずっと御剣さんと一緒に行動していたんですか? こうして自分の判断で見捨てるならば、もっと早い段階で見捨てていたはずです」
「…………」
「葉月さんが何故御剣さんと一緒に行動していたのか……。それは、葉月さんが彼と一緒に行動しようという確固たる理由が無いと成立しないんですよ。……そうじゃないですか? 葉月さん」
葉月さんはハッとしたような顔をして、御剣のほうをゆっくりと見た。
「桜井君の言うとおりだ。…………ははっ。いい歳した人間だというのに、僕はどうしてこんな事に気が付かなかったのだろうか――」
自分をあざ笑うかのようにして、葉月さんは御剣に対して頭を下げた。
「御剣君、君を裏切るような真似をして申し訳なかった――」
僕は、彼の謝罪を見届ける事もなく部屋から去って行った。
――――――
――――
――
今日はここら辺で終わります。
平日は何かと忙しいので、進む速度が落ちると思います。
何か感想とかあればお願いします、捗ります。
では
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