642: ◆WNrWKtkPz.[saga]
2012/11/15(木) 23:04:10.26 ID:onJgQVYl0
僕は十分に警戒しながら御剣の後についていくことにした。
「祐司……?」
「御剣さんだけだと不安だから、僕も行くことにするよ――」
かりんに僕を止める隙を与えずに、僕は御剣と同じ歩幅で歩き始めた――
「……そこにいるのは、長沢か!?」
御剣が廊下に響き渡る声で話しかけると、いままで聞こえていた足音がピタリと止まった。
向こうからは何も聞こえないところから、こちらの出方を伺っているようである。
「まあ、誰であるかは良いとして……俺たちは戦闘を仕掛けに来たんじゃないんだ。だから、平和的に事を進めていきたい――」
御剣が説得の言葉を言い終わる前に、こちら側に何かが投げ込まれてきた。
聞こえたのは、床に転がる金属音――
「祐司ッ!」
僕はその後かりんの声が聞こえると共に、後方へ走って逃げた――
直後――体が爆風で煽られると同時に耳を刺す轟音が僕の五感を麻痺させた――
(――手榴弾か)
御剣も廊下に伏せていて外傷も見当たらないところから、上手く避けたみたいである。
どうやら、相手は交渉云々を要する相手では無いらしい。
「かりん、煙幕を!」
「う、うん!」
長沢の正体が廊下の角から見えると同時にかりんがスモークグレネードを投げ込む――
「――――チッ!」
拳銃を持ち出していた長沢は、再び廊下の角に姿を隠した。
「よし、逃げますよ!」
煙幕が廊下に広がり始めたのを確認した僕たちは拳銃で威嚇をしながら逃げはじめる――
「待てッ!」
僕たちが攻勢的ではないと判断したのか、長沢は勢い良くこちらを追いかけてきているようだ。
「祐司……そろそろ――」
「いや、もう少し向こうの様子を見てからにしよう。焦りは禁物だからね」
「……うん」
と言いながら、僕は起動式爆弾を懐から手に取る――
(かりん、ごめん――――)
長沢が調子に乗っている今が、かりんの言うとおりでまさに仕留めるべき時なのだ。
僕は嘘をついてしまった事を心の中でかりんに謝りながら、次の廊下の角で立ち止まった。
「少し長めに威嚇射撃しますから、御剣さんたちはルートの確認をしてください!」
「分かった!」
これから僕がしようとすることを、御剣さんは許してくれるのだろうか。
いや、許してくれなくとも僕はかりんのために――
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